宮崎あおい主演の『オカンの嫁入り』を鑑賞。2010年、呉美保監督。原作は咲乃月音さんの小説。
オカンの嫁入り
舞台は大阪・枚方。生まれる前に父親を亡くし、母・陽子(大竹しのぶ)と愛犬・ハチと暮らす月子(宮崎あおい)。
こちらもヘベレケになっていた研二は三和土で倒れこむように眠り、翌朝になっても何故か帰らない。
金髪リーゼントに赤いジャケット、白いタートルネック。
あおいちゃん100%
(陽子と月子の家の大家であるサクさんを演じる絵沢萠子も兵庫出身で、作内の主要登場人物は宮崎と大竹を除き関西出身者で固められていた。※Wikipedia参照)
ありがちな安っぽい抑揚は感じられず、とても心地よい。
その大阪の下町感に後押しされるように宮崎あおいが躍動する。
母の突然の報告に戸惑い、ふてくされ、研二を無視し、サクさんの部屋に逃げ込み、ある過去のトラウマに悩まされる月子というキャラクターはなかなか難しい役どころであったはずだ。
しかしそこは飾らず、気負わず、媚びることなく宮崎あおい。
こたつで眠る母を大股で跨ぎ(結構危ない)、爪先をこすり合わせるようにして毛布を引っ掛けながら階段を降り、牛乳を飲みながら両足の間で愛犬の顔を挟み、お好み焼きの決して行儀良くはないザックリとした食べ方。
そして、その所作をしっかり見せていくカメラワーク。丁寧な作り。
宮崎あおいは100%月子を演じながらも、月子もまた僕たちのイメージする宮崎あおいらしさに溢れていた。役名に食われず、俳優名に食われず。
大竹しのぶ、桐谷健太もまた然りだった。
研二は真っ直ぐすぎるほど正直な太陽のような男で、俳優でいうと佐藤隆太のような人がイメージに合うかなと思ったが、桐谷が抜群である。
私が彼を受け入れる理由
月子が心を開いていくきっかけとなる研二のいくつかの心配り。
月子がトラウマを克服する時に唱えたおまじない。
毎日同じ赤い服を着て、金髪をなで付ける研二。
物語後半では、陽子の病が発覚して大きな展開を迎える。
研二は元々知っていたのだが、医師を通じて初めて母の病状を知った月子は陽子にこぼした。
「私にも、言ぅてほしかった。言ぅてくれてたら、もっとちゃんとできたのに。あの人のことも、もっとちゃんと受け入れてたのに。」
この作品で一番印象的なシーンと言われたら、迷わずこの場面を挙げる。
たくさんの人に知ってほしい、素晴らしいセリフだった。
きめの細かい演出に確かな実力の俳優陣。研二のつくる料理と京阪電車の風景が花を添える良質のヒューマンドラマ。