映画『オカンの嫁入り』〜真っ直ぐな桐谷健太〜

宮崎あおい主演の『オカンの嫁入り』を鑑賞。2010年、呉美保監督。原作は咲乃月音さんの小説。

オカンの嫁入り

舞台は大阪・枚方。生まれる前に父親を亡くし、母・陽子(大竹しのぶ)と愛犬・ハチと暮らす月子(宮崎あおい)。

ある日の午前3時、酒に酔った陽子が千鳥足で帰ってくると、彼女の後ろには金髪リーゼントの青年・研二(桐谷健太)が。

こちらもヘベレケになっていた研二は三和土で倒れこむように眠り、翌朝になっても何故か帰らない。

陽子の口から出たのは衝撃の一言。
「お母さん、この人と結婚することにしたの」
服部研二、30歳。元板前、現在無職。

金髪リーゼントに赤いジャケット、白いタートルネック。

なぜいきなり、なぜこんなダサ男と。
困惑し、憤る月子。意味わからへん。そらそうや。

▲作内の主要キャストは宮崎と大竹を除き関西出身者で固められていた。自然な関西弁が心地よい。 (C)2010「オカンの嫁入り」製作委員会

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あおいちゃん100%

大阪出身の桐谷健太はもちろん、宮崎あおいと大竹しのぶもまた上手に大阪弁を操っている。

陽子と月子の家の大家であるサクさんを演じる絵沢萠子も兵庫出身で、作内の主要登場人物は宮崎と大竹を除き関西出身者で固められていた。※Wikipedia参照)

ありがちな安く押し付けがましい抑揚は感じられず、とても心地よい。

その大阪の下町感に後押しされるように宮崎あおいが躍動する。

▲呉美保監督(右)と宮崎あおい。 「枚方つーしん」から転載 (C)2010「オカンの嫁入り」製作委員会

母の突然の報告に戸惑い、ふてくされ、研二を無視し、サクさんの部屋に逃げ込み、ある過去のトラウマに悩まされる月子というキャラクターはなかなか難しい役どころであったはずだ。

しかしそこは飾らず、気負わず、媚びることなく宮崎あおい。

こたつで眠る母を大股で跨ぎ(結構危ない)、爪先をこすり合わせるようにして毛布を引っ掛けながら階段を降り、牛乳を飲みながら両足の間で愛犬の顔を挟み、お好み焼きの決して行儀良くはないザックリとした食べ方。

そして、その所作をしっかり見せていくカメラワーク。丁寧な作り。

宮崎あおいは100%月子を演じながらも、月子もまた僕たちのイメージする宮崎あおいらしさに溢れていた。役名に食われず、俳優名に食われず。

大竹しのぶ、桐谷健太もまた然りだった。

研二は真っ直ぐすぎるほど正直な太陽のような男で、俳優でいうと佐藤隆太のような人がイメージに合うかなと思ったが、桐谷が抜群である。

ギョロ目、笑顔、真顔、再び笑顔。
最高やで、研二くん。見た目ダサいけど最高や!

▲真っ赤なジャケットに金髪リーゼントの研二(桐谷健太)。 「枚方つーしん」から転載 (C)2010「オカンの嫁入り」製作委員会

私が彼を受け入れる理由

線路脇を散歩するシーンからスッと入り込む月子の過去のトラウマ。

月子が心を開いていくきっかけとなる研二のいくつかの心配り。

月子がトラウマを克服する時に唱えたおまじない。

毎日同じ赤い服を着て、金髪をなで付ける研二。

とても丁寧にエピソードを散りばめては回収を繰り返す作品である。
だから結果的に無駄なシーンはほとんどないし、伏線の回収に至らなかったところも人間関係描写の補強となっていた。

▲線路を背にたたずむ月子と愛犬ハチ。 「枚方つーしん」から転載 (C)2010「オカンの嫁入り」製作委員会

物語後半では、陽子の病が発覚して大きな展開を迎える。

研二は元々知っていたのだが、医師を通じて初めて母の病状を知った月子は陽子にこぼした。

「私にも、言ぅてほしかった。言ぅてくれてたら、もっとちゃんとできたのに。あの人のことも、もっとちゃんと受け入れてたのに。」

この言葉に対する陽子の返事に、僕は胸をえぐられるような感覚を覚えた。
優しさと同情と愛情。

この作品で一番印象的なシーンと言われたら、迷わずこの場面を挙げる。

たくさんの人に知ってほしい、素晴らしいセリフだった。

きめの細かい演出に確かな実力の俳優陣。研二のつくる料理と京阪電車の風景が花を添える良質のヒューマンドラマ。

非の打ち所がない。

★★★★★。

なお、画像を転載させていただいた「枚方つーしん」さんでは呉美保監督のインタビューや撮影の秘話がたっぷり。
ぜひご覧になってみてください!

「オカンの嫁入り」呉美保監督にインタビューしました(1)今作品に込められたテーマ

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