2011年公開の『軽蔑』。
廣木隆一監督、高良健吾、鈴木杏。原作は中上健次の最後の長編作品。
公開当時、結局見ることができずにHDDに録っておいたものを再生。
かんたんなあらすじはMovieWalkerさんのページが詳しいので未見の方はそちらで確認していただきたい。
映画のネタバレ感想
高良演じる主人公のカズは文字通り人間のカスであった。ルーズな金銭感覚、危機感の欠如、周囲への空威張り。
カズに対して感情移入しようと思うと、まず9割がたは失敗すると思う。感情移入できるできないを通り越したクズ人間である。
いきがった勘違い人間を演じる高良は、育ちの良さ(これも彼を表す一つのファクター)が随所に見られて良かったが、スマート過ぎた。
もう少し幼児的な、拙いキャラクターで良かったはず。
カズと恋に落ちるマチコを演じるのは鈴木杏。
こちらは妖艶さとか悪どい雰囲気が足りなかったキャスティングという印象を受ける。
熱演していた鈴木杏だったが、彼女ではダメ男のカズを捨てきれない闇は見えなかったし、彼女の能動性が全く見えなかった。
作内ではカズが支配しているように見えても、精神的な部分ではマチコが主導権を握っている、そんなキャラクターの方が映えると思ったのだが…
キャラクターで言えば大森南朋もがっかり。彼の演技ではなく、終盤で突如振り切れてしまった彼のキャラクターに、である。
カズとマチコが恋に落ちた背景や愛を育む描写がベッドシーン以外にないのか!という評論は多い。
僕も、彼ら二人の描き方は非常に浅いと思うし、田舎の閉鎖性という点でも中途半端だと思った。
そのくせ終盤では物騒な描写が続く。
説得力に乏しいストーリーは予定調和であり、感情移入もしなければ現実味も全くない。
ただ、上で述べた男女の関係や村の閉鎖性の中途半端さが故意の狙いであれば、それはそれで評価したいと思う。
結婚した二人が誰しも豊富なストーリーを持っているわけじゃないから。
中途半端を押し出すのであれば、終盤の展開は針が振れすぎてしまっていたけど。
シーンの切り取り方は秀逸
映像に関しては長回しを効果的に使いつつ、メリハリをつけたみずみずしいシーンの切り取り方が印象的で良かった。
手持ちでブレが気になるという声もあったが、僕は気にならなかった。
むしろ俳優陣の声がボソボソで聞こえづらかったかな。
ラストシーンもぼくは良いと思わなかったけど、人それぞれでしょう。
時代設定と純文学の原作を考えると、もう少し陰鬱に作っても良かったのかもしれませんね。