映画『ベイビーわるきゅーれ』ネタバレ感想|伊澤半端ないって。あいつ半端ないって!

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

今回は2021年公開の『ベイビーわるきゅーれ』をご紹介します。

観よう観ようと思っていたもののなかなか行けず…ようやく観ることができました!

阪元裕吾監督のもと、髙石あかりさん、伊澤彩織さんのダブル主演。ティーンの女子二人組が殺し屋として、またイチ社会人として奮闘する日々を描いた作品です。
伊澤さんのアクションがもう半端なかったです。伊澤半端ないって、あいつ半端ないって。(以下略)

公式サイトのイントロダクションは以下の通り。

「明るい殺し屋映画」があってもいいじゃないか!
社会不適合者な“元女子高生”殺し屋コンビが頑張って社会に馴染もうと頑張る異色の青春映画が誕生!

日常への共感と非日常の爽快感と。こういう体験をするために映画館へ足を運ぶんだよなぁという感覚を思い出させてくれる映画でした。傑作です。

あらすじ紹介

女子高生殺し屋2人組のちさととまひろは、高校卒業を前に途方に暮れていた・・・。
明日から“オモテの顔”としての“社会人”をしなければならない。組織に委託された人殺し以外、何もしてこなかった彼女たち。
突然社会に適合しなければならなくなり、公共料金の支払い、年金、税金、バイトなど社会の公的業務や人間関係や理不尽に日々を揉まれていく。
さらに2人は組織からルームシェアを命じられ、コミュ障のまひろは、バイトもそつなくこなすちさとに嫉妬し、2人の仲も徐々に険悪に。
そんな中でも殺し屋の仕事は忙しく、さらにはヤクザから恨みを買って面倒なことに巻き込まれちゃってさあ大変。
そんな日々を送る2人が、「ああ大人になるって、こういうことなのかなあ」とか思ったり、思わなかったりする、成長したり、成長しなかったりする物語である。

出典:公式サイト

映画の紹介に「女子高生殺し屋」というフレーズがありますが、個人的にこの映画の主人公二人には「女子」とか「高校生」といった形容詞を感じませんでした。

「女の子だけどかっこいい」とか「女の子なのに殺し屋」とか、ギャップを想起させるような表現は『ベイビーわるきゅーれ』には不適切だと思います。「かっこいい殺し屋」は女の子だった。それだけです。

スタッフ、キャスト

監督・脚本 阪元裕吾
アクション監督 園村健介
杉本ちさと 髙石あかり
深川まひろ 伊澤彩織
浜岡(親父) 本宮泰風
浜岡ひまり 秋谷百音
浜岡かずき うえきやサトシ
渡部 三元雅芸
須佐野 飛永翼
田坂 水石亜飛夢
姫子 福島雪菜
この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



ポスターから漂うただならぬ空気

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

ポスター画像

映画のポスタービジュアル。(C)2021「ベイビーわるきゅーれ」製作委員会

この映画を観たい!と最初に思ったのは、実はポスタービジュアルでした。
黒(と黄色)のバックに、濃いマゼンタで「ベイビーわるきゅーれ」のロゴ。

この配色に痺れました…!

個人的な感覚なんですが、マゼンタ(ピンク)が一番映えるのってブラックと組み合わせた時だと思うんですよね。マゼンタの持つ甘さをキュッと締めてクールな印象を加算する。映画『暗黒女子』なんかもそうですね。

そんでもって、『ベイビーわるきゅーれ』のキーカラーとなっているイエローがそこに組み込まれています。道路標識や工事現場の車止めなどでもあるように、黄色と黒というのは見る側に注意意識、WARNINGを促すものですよね。

『キル・ビル』なんかも同じですが、黄色と黒の配色を見て、何かただならぬ雰囲気を感じるわけです。殺し屋というイメージにも合致しています。

そしてマゼンタで施される「ベイビーわるきゅーれ」のロゴ。
このロゴがポップなフォントなのも良いです。警告感ムッキムキの緊急感を少し緩めています。もしこれが明朝体のフォントとかだったらかなりイメージは違ったはずですけど、マゼンタを甘すぎず、また深刻にしすぎず…といった具合に緩和しているように感じました。
「明るい殺し屋映画」はイエローとブラックとポップなマゼンタで表現されたこのポスターですでに成功しているといってもいいくらいです。

 

緩急をつける、という表現がありますが、『ベイビーわるきゅーれ』はとにかく緩と急のつけ方が素晴らしい映画でした。

この記事の最初で、「日常への共感と非日常の爽快感と」という表現をさせていただきました。日常の「緩」、そして非日常の「急」。両方がハイレベルで鮮やかなコントラストを放つ『ベイビーわるきゅーれ』、めっちゃ良かったです!

緩:ティーンの日常

まずは「緩」の部分から見ていきましょう。

高校卒業を控えたちさと(髙石あかり)まひろ(伊澤彩織)は、社会人としての資質を身につけるため、組織(笑)からルームシェアを命じられます。

住まいは東京・鶯谷。ホテル街として有名な街です。
下北とかだったら良かったのにーと、こぼすちさと。そう甘くないですね。基本ちさととまひろは上野近辺の東京北東部をテリトリーとして行動することになります。多分。

鶯谷の画像

鶯谷近辺。2021年撮影

それまでどんな感じで生活していたのかは明かされませんが、身の回りのことを自分たちで行う「自立」というのは、彼女たちにとって難易度が高かったんでしょう。洗濯機を壊してしまったり、バイトの面接でしくったり、バイト先をクビになったり、となかなか上手くいきません。

絶妙な二人の生活感

彼女たちの生活は基本的に、ダイニングキッチンのソファー(兼まひろの寝ぐら)を中心にして映されます。ソファーの上でスマホ、パソコン、ゲームをしながら過ごす二人。おじさんの僕にはわからないようなツールも時折使いながら、また今の子でも求人誌でバイト探しするんだ?みたいな発見がありながら、ちさととまひろの緩ーい生活が描かれていきました。

「おつかれい!」の空気感もいいですよね。歯に衣着せぬなちさとの言葉遣い本当好き。

二人以外、例えばヤクザの親子だったり死体処理業の青年だったり、という人たちは比較的わかりやすいアイコンに身を包む一方で、ちさととまひろのファッションはかなり自然に感じます。

その服どこに売ってんの?みたいなのを着ているときもありながら、ちさと、まひろともに着させられている感がマジでない。お互い好きなものを好きに着てるんだろうなというのがすごく伝わってきました。

部屋での二人は、せわしなく動いて喋るちさとと、低めのテンションでぬるっと、だらっとしているまひろという風にコントラストも効いています。ウィットに富んだ言い回しもあるにはあるものの、ボケとツッコミとか狙った感じの会話はなかったように思います。笑いの部分ではちさとのダーッとした喋り方に負うところが大きかったのではないでしょうか。

そもそもとして部屋の脱力感がいいですよね。コンクリ打ちっぱなし!ホワイト基調!みたいな洒落たデザイナーズ物件でもなければ、部屋にあらゆる物が散乱している汚部屋でもなく、二人の「好き」で構築されているような鶯谷の二人暮らし。

多分一人じゃこういう部屋にはしないと思うんですね。二人だからこその個性と少しの雑多感が見えて素敵でした。

緩から急へ

そんなちさととまひろがバイト探しに奔走し、裏稼業(本業)で人を殺めている一方、街には彼女たちのエネミーとなるべくヤクザが現れます。

浜岡という男に、その娘と息子。あと、娘の用心棒的な渡部とかいうジャージ野郎。
奴ら浜岡親子が物語後半でちさとまひろの前に立ちはだかってくるわけですけども、この3人は別に強くありません。

浜岡の親父(本宮泰風)は団子屋の親父が言った冗談の言葉尻をとらえてとんでもねえ言いがかりをつけたり、価値観のアップデートを履き違えたりと見るからに迷惑な不良。ちさとに呆気なくやられる。

息子のかずき(うえきやサトシ)は2010年代前半によくいたE●ILE系マイルドヤンキーみたいなナリでありながら、メイド喫茶ではちゃんと萌え萌えキュンして楽しんでるので根は良い奴。浜岡の子供に生まれた境遇が運の尽きでしたね。かわいそうに。「親父ぃ、楽しいなァ?!」と言っていたあの笑顔を返してほしい。こちらもちさとにやられる。

この辺は怖くないんですよね。ちさとたちに拉致られて「俺も竹の塚あたりでは有名」(笑)とかイキってたおっさんとかも含めて、ネタ要員です。まだ「緩」です。

あいつら半端ないって

で、「緩」が「急」になるのはやっぱり最後のカチコミシーン。

前説長めでただならぬ雰囲気をまとって出てきた男が、誰おまえ的な感じであっさりとやられ、勝負の興味は渡部とかいうジャージ男(三元雅芸)まひろのファイナルバトルに集中します。

強い奴呼んでこいよ、いねぇのかよとのたまってただけあって、ジャージ男は強く、鮮やかでした。
一方のまひろも圧倒的に強いし、圧倒的に動ける。
レベチの二人が超絶的な動きで技を繰り出し、戦います。

もうなんか…格ゲー見てるみたいでしたね。

大体の映画においてバトルシーンって、「…やるじゃねェか」「てめーもな」みたいにお互いになんか言いながら戦ったりだとか、右ストレート!みたいな渾身の一撃で決着がつくことが多かったりすると思うんですよ。

でもジャージ男渡部とまひろの決戦はそんな生ぬるいシーン皆無。マジでガチ。

なんといっても動きや技の連続性ですよ。渾身のパンチ!ビシュッ!じゃなくて、突き突き突き!ってな感じで連続攻撃。受けてからの反撃も即座。息もできないくらいに。

まひろ半端ないって!もう。あいつ半端ないって!
信じられへんような動きめっちゃするもん…!
そんなんできひんやん普通。そんなんできる?
言っといてや…できるんやったら…!

まひろもジャージ男も、マジでやばかったです。大迫半端ないって構文使いたくなるくらいには半端なかった。
まひろからしてみれば、こんな強いやついるんだったら言っといてや…そんなんできひんやん普通って感じだとも思います。

しかも拳や蹴りを交えるだけじゃなくて銃も有ります。響く銃声がさらに高める緊迫感。殺るか、殺られるか。デッドorアライブ。

銃といえば、特にちさとが使う銃撃も爽快感たっぷりでした。銃パンパァン!が本当に気持ちいい。

今までアクションってそんな興味なかったんですが、この映画見て考え方変わりましたね。

異質な他者への当たりの強さ

ここまで「緩」「急」について日常シーン、アクションシーンを書いてきましたが、別で印象的な部分が有りましたので紹介します。

ちさととまひろの、異質なものへのあたりの強さです。

まひろは冒頭のコンビニ面接シーンで、店長(大水洋介)が「夢は逃げない。逃げるのはいつも自分」by野原ひろし、なるパチ名言を繰り出したことに怒りを覚え、それ野原ひろしのセリフじゃねーよと悪態をついています。ちさとにも、あの店長マジでありえねえと愚痴りました。

まひろは結構物事を斜に構えるというか、人の言うことなすことを受け入れない側面があるようで、ちさとにも「自分では何もしようとしないくせに頑張ってる人を見下してるツイッタラーと同じ」などと言われています。

一方のちさともちさとで、メイドカフェの雇われ店長が言った「癖が強いんじゃ」に対してディスり気味に「それ使ってる人まだいるんだ」と言ったり、コンビニで総額1000円くらいしそうなランチを買い込んできた姿をメイドカフェの先輩・姫子(福島雪菜)に豪華だねと言われて姫子を貧乏扱いしたりと、自分の価値観と違う他者への攻撃性を垣間見せます。

僕も学生時代の昼食は98円のカップ麺でしたので姫子パイセン側ですね…300円あったら牛丼買うし1000円あったら他に使ってました…

尖る理由がわかるだけに…

二人のこの攻撃性は、結構印象的だったんですよね。
コンビニの店長は(嫌なやつでしたけど)別に悪意を持って野原ひろしのパチ引用をしたわけじゃないですし、メイドカフェの店長も場を和ませようとして言った言葉です。

そんな言葉を何言っちゃってんのこいつ?ダサい、で片付けてしまうのは刺激的に映りました。いやそこまで言わなくてもいいじゃんって。
多分僕みたいなのが彼女たちと話したら後でめっちゃ悪口言われるんだろうなと(笑)。

ルームシェアを命じられたこともそうですし、『ベイビーわるきゅーれ』は社会性を身につけていくお話なんですよね。

大人になる、とかじゃなくて社会性の話。大人でも社会性無い人なんてたくさんいます。まじでドン引きだよ気持ち悪いよお前みたいなやつらばっかりなこの世の中。

けれどドン引き発言の裏側にはちゃんと理由があって、そうしなきゃいられない人たちもいる。姫子だって好き好んで安いパンを食べてるわけじゃないんですよね。そこをバカにするだけじゃなくて、どう順応するのかというのも社会性を獲得する一つなのではないでしょうか。

個人的には「社会不適合者」と自認し、人の粗を見つけて安全なところから罵る(特に)まひろの気持ちがよくわかります。わかるからこそ、これからも彼女たちなりの価値観でエッジを研ぎ澄ませていくのか。もう少し迎合するようになるのか。そんなところが気になりました。

公式サイトのストーリー紹介にあった“「ああ大人になるって、こういうことなのかなあ」とか思ったり、思わなかったりする、成長したり、成長しなかったりする物語”の「大人になる」部分に、余白として思いを馳せたいと思います。

最後になりますが、戦い疲れたまひろが両手をとってちさとに起こしてもらうところは「二人なら最強」感が出てて胸熱でした。コンビニ大決戦(妄想)でもありましたが、あそこのシーン好きだなぁ…!

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