映画『ぐらんぶる』ネタバレ感想|ぶっ飛んだ原作の再現度は?

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本記事は飲酒についての描写を多く含みます。ご注意ください。

こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

今回は2020年に公開された『ぐらんぶる』を紹介します。
英勉監督、主演は竜星涼さん犬飼貴丈さん

スキューバダイビングサークルでありながら、ダイビングをほとんどしない大学サークルを舞台にしたコメディ作品。

原作・井上堅二さん、漫画・吉岡公威さんのコミックが実写映画化されました。すでにアニメにもなっている作品ですが、原作の高濃度なぶっ飛び具合をどれくらい再現できるのか?というところが焦点になります。

今回はアニメ鑑賞済み、漫画も映画のストーリーに対応する5巻まで読んだ上で映画を鑑賞した立場から感想を書いていきます。

苦言6割、良かったところ4割くらいの比率ですが、ご了承ください



あらすじ紹介

伊織(竜星涼)は、青い海に囲まれた離島にある伊豆大学に入学し、気さくな仲間やかわいい女子と大学生活をエンジョイすることだけを夢見ていた。だがオリエンテーション当日の朝、大勢の人が集まった大学の講堂で、伊織は記憶がないまま素っ裸で目を覚まし、自分と同じ状況の耕平(犬飼貴丈)出会う。

出典:シネマトゥデイ

スタッフ、キャスト

監督 英勉
原作 井上堅二、吉岡公威
脚本 英勉、宇田学
北原伊織 竜星涼
今村耕平 犬飼貴丈
古手川千紗 与田祐希
古手川奈々華 朝比奈彩
浜岡梓 小倉優香
吉原愛菜(ケバ子) 石川恋
時田先輩 鈴之助
寿先輩 岩永洋昭

『ぐらんぶる』のあらすじや評判、口コミはMIHOシネマさんの記事でも読むことができます。(ネタバレなし)

ぜひご覧ください!

この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



開始20分の地獄

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

 

映画『ぐらんぶる』は、真っ裸で大学の中庭に寝ている主人公の北原伊織(竜星涼)が目を覚ますところから始まります。周りにはギャラリーがわらわらと集まっており、伊織は狼狽します。

なぜ俺は全裸でこんなところにいるのか?という謎すぎるシチュを伊織と一緒に楽しむのは確かにそうなんですが、いかんせんこのパートが長い!タイムリープのように何度も何度も最初の全裸目覚めシーンに巻き戻し、同じシーンの焼き直しを約20分にわたり再現し続けます。

この序盤で心が折れた人もいるんじゃないでしょうか…?

伊織や、同じく酒に飲まれて全裸放置された今村耕平(犬飼貴丈)にとって大学入学初日のこのシーンは地獄以外の何物でもありません。初日にあんな形で登場したら後のキャンパスライフに多大なる悪影響を及ぼすことは間違いありません。

でも映画版における本シーンの著しい強調は、別の意味で地獄となっています。

下品の温度差

何というか、原作と映画版では「下品」の温度差が違うんですよね。笑

この作品は「服を脱いでいる」(裸)が大きな個性となっているわけですが、原作の面白いところは、この流れだと思うんです。

  • 人が服を着ていない
  • 服を着ないのが普通だと思っている
  • それに伊織や耕平も染まっていく

特に2番目の「服を着ないのが普通だと思っている」先輩たちが、服を着る必要なんてないだろう?当たり前だろう?何を言ってるんだ?とトボけた感じで、着衣の概念を軽々とぶち破ってくる破天荒さが魅力だと思っています。

そしてその脱衣主義にあっさりと染まっていく伊織や耕平もポイントとなっていきます。

喧騒を重視した映画

その温度感を映画で表現できているかというと微妙です。というか、おそらく上で述べた(私が感じた)原作の魅力とは別のところに、映画は「脱衣」のポイントを見出していました。

それがVAMOS!に始まるダンスです。

このVAMOSダンスが、古手川のおじさん(高嶋政宏)らも含めて何度も出てくるんですけど、非日常、異世界感を感じさせるものだったんですよね。ってかバカ騒ぎです。笑

原作で先輩たちPaB(ピーカブー)のメンバーが楽しみにしていること、また彼らの目的は、お酒を飲むことなんですよ。お酒を最大限楽しく飲むために、彼らは服を脱ぎ、スピリタスのような度数の高すぎるお酒を飲み狂います。

彼らは服を着たままお酒を飲むと体調が悪くなるんですよね…笑

けれど映画版におけるPaBのメンバーはというと、彼らの目的はVAMOSすることであり、というかもはやそれが目的なのかわからないくらいに、VAMOSダンスする機能が身体に自動プログラムされているフシがあります。

BeBe…から始まるVAMOSの喧騒、そしてその喧騒から抜け出せない悪魔のような環境が、映画の最も描きたかったPaBのヤバさでした。このVAMOSを楽しめるかどうかが鍵になってくると思います。VAMOSVAMOS言いすぎて長友かと思いましたよ。

俺たちのケバ子の喪失

映画で物足りなかった部分でさらに挙げるとすれば、ケバ子と呼ばれる吉原愛菜の描写です。石川恋さんが演じています。

彼女がなぜケバ子と呼ばれるのかを紐解く、学園祭のミスコン描写は完璧だったと思います。素晴らしかったです!

だけど、脱ケバした愛菜がPaBに入ってからの扱いがあまりにも雑です。笑

『ぐらんぶる』の魅力は、酒と着衣の感覚が麻痺したPaBのメンバーたちを、まだ感覚の麻痺していない私たちが眺めて楽しむ部分にあると思うんです。異端と常識のせめぎ合いです。

で、「常識」側だった伊織耕平が異端に染まり、私たちも伊織たちと同様に麻痺し、PaBの酒宴の雰囲気に酔っていく中で、ケバ子とは「常識」側の視点を持った大事な人物なんですね。観ている側の理性を代弁した最後の希望と言ってもいいです。

でもPaBに入って以降の愛菜はモブ化します。
彼女が思い描いていた人生の思い出づくりとしてのサークル活動とは程遠い現実を思い知らされる描写こそありましたが、もっともっともっとケバ子を主人公目線に置いて伊織たちのイカれ具合を傍観者的に出してほしかったです。ケバ子の使い方は映画化における大きな喪失でした。

PaBの主要メンバーといえば、“異端”側の象徴でもある梓(小倉優香)の影も薄かったです。映画で見せた印象よりも、もっとぶっ飛んだ人なはずなんですよ彼女は。

後出しで出てくる以上、梓とケバ子に尺を割くのは難しかったと思うんですが、序盤の全裸中庭リピートと、中盤に挿入された山本(矢本悠馬)野島(森永悠希)のくだりが要らなくて本当に勿体ない…。

山本も野島も心底キモくてスポット的には面白かったですけどね。物語全体を考えると不要でした。笑

以上が映画を観て感じた残念な点になります。この後は良かったところを挙げていきます。



飲酒描写への挑戦

『ぐらんぶる』の三本柱は、お酒、そしてダイビングです。

飲酒や肌の露出にはコンプラ問題がついてくる中、本作品の素晴らしいところは脱衣系飲みサークルをチキることなく描いたところでした。
(冒頭部分含めてちょっとポイントが違った感もありましたが)脱衣に関しては、やり過ぎなくらい映画の第一義と化しています。

5月に伊織が「俺は服を着て大学に行ったことがない…」と言ったり、ミスコンで傷心したケバ子を慰める耕平がポッケに手を突っ込むかのようにパンツの中に手を入れて話すシーンはガチで吹きました。

そしてそれ以上に凄かったのが飲酒の描写です。

飲酒を笑い話にするハードル

『ぐらんぶる』の登場人物たちはお酒をよく飲みます。主要メンバーは大体酒が強い。
強いがゆえに浴びるようにお酒を飲み、お茶のごとくアルコールを摂取しています。基本的にお酒が強い人たちが飲んだくれている作品です。

ただ、PaBの酒の飲み方、飲ませ方はお酒の強要と見られる可能性もあると思います。不快感を覚える人もいるでしょう。怖いと思う人もいるでしょう。
こういう飲みサーも実際にあるにはあると思いますが、倫理的に照らし合わせればまあアウトですよね。

お酒でつぶれる描写も多々あり、無理な人にはマジで無理な世界だと思います。

そんな逆風が予想される中でも、お酒を軸にして振り切った実写には感謝しかありません。

水に見せかけてお酒が出てきた通り、『ぐらんぶる』ではアルコールの含まれていない飲料を飲むのがとても難しい状況にあります。茶色い飲み物は烏龍茶に見せかけてウイスキーだったりします。アルコール度数60度の酒が生やさしいとされるくらいにはイカれています。
見方によっては犯罪級の飲酒ぶりをコンプラにビビらず実践したのが凄い。

ちなみに伊織や耕平は大学1年生ですが、彼らの飲酒を合法化するために映画(とアニメ)では二浪上等の20歳設定になっています。執念を感じますよね。笑

圧巻の千紗、そして先輩

また映画『ぐらんぶる』では主要キャラクターの出演陣がとても良かったです。

特に作品のヒロインとなった千紗(与田祐希)と、脱衣とお酒大好きな時田先輩(鈴之助)寿先輩(岩永洋昭)の3人です。

この3人は作品の三本柱である「お酒・裸・ダイビング」の3つ目、ダイビングを真剣に描写する部分で重要な役割を担っています。

与田祐希の千紗

千紗において大切なのは、伊織との距離感、そしてダイビングに対する純粋な姿勢になります。

馬鹿騒ぎする伊織に対してゴミを見るかのように冷たい視線を送り、もはや人間扱いすらしていない千紗ちゃん。野球拳で勝ち名乗りの奇声を上げる伊織を見た白い目、そしてポンと肩に置かれた手をハエを払うかのように払い退け、「この服もう捨てたほうがいいかも」とお姉ちゃんのもとに無表情で持っていく姿。完璧すぎます。

けれどひとたびダイビングのことになると、千紗は伊織にもダイビングの魅力を感じてもらいたい一心で協力的に。ダイビングショップでカメラを見つめる千紗は好きなものに目を輝かせる子どものように純粋です。確か梓さんが「ちぃちゃん、かぁわいぃねぇ〜」と(若干犯罪者的な目で)愛でていましたが、同感でございます。

鬼千紗と優しい千紗の使い分けが与田さんは見事でした。

抜群すぎる先輩コンビ

その千紗以上に良かったのがサークル「ピーカブー」の幹部である時田先輩寿先輩です。

伊織と耕平を無理やりPaBに引き入れた張本人であり、時田先輩は鈴之助さんが、寿先輩は岩永洋昭さんが演じています。

この先輩たちは脱衣してお酒を飲むのが大好きで、酒宴に対して物凄い執念を見せているわけですが、一方で千紗と同じくらいダイビングを愛しており、ダイビングに真面目に向き合っています。お酒の場ではモンスターと表現しても差し支えないものの、ダイビングモードになれば頼れる先輩です。

彼らは伊織と耕平がハンドサインを覚えているか確かめるために軽いノリでテストを行います。また、ダイビングショップでは伊織に対して売り場の器材を見せて、自分で答え(オクトパス)にたどり着いた伊織を嬉しそうに見つめています。

ショップでのやり取りは映画オリジナルだと思いますがとても良かったです…!

しかも圧倒的なゴリマッチョでありながら、先輩たちは威圧的な態度とは無縁なんですよね。ちょっと惚けた部分もあり、後輩の伊織や耕平が反論(ツッコミ)をする隙をちゃんと有しています。

この温度感が実写化になると難しいかなと思っていたんですが、鈴之助さん、岩永さんともに、全くパワハラ味を感じさせない懐の深さを表現していました。完璧でした。

 

お酒、脱衣に関しては破天荒な行動を繰り広げていますが、題材にしているダイビングに対しては100%正しく向き合っているのが『ぐらんぶる』という作品の魅力であり、存在義務でもあります。

その点で千紗、時田先輩、寿先輩の描写が鍵になってくる中、ダイビングを安全に楽しむために必要なことを端折ることなく表現してくれたと思います。

色々偉そうに注文つけましたが、突っ込みながら笑える映画でした。笑

原作漫画やアニメでは実写版とはまた違うぶっ飛び方が楽しめると思います。ぜひご覧になってみてください!

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