映画『くれなずめ』感想|「男子って本当バカ!」に(笑)を付けられるあなたへ

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こんにちは。織田です。

今回は2021年公開の映画『くれなずめ』をご紹介します。

『アズミ・ハルコは行方不明』や『アフロ田中』などの松居大悟監督。主演は『まともじゃないのは君も一緒』など大活躍中の成田凌さん

松居大悟監督の作品では『スイートプールサイド』(2014)がガツンとハマりました…!

結論から言うと、個人的にはイマイチ乗り切れませんでした。

自分がハマれなかったポイント、一方で他の皆さんがこの作品を愛おしいと思えるであろう部分を書いていきます。

序盤の男くさいノリを楽しめるかどうかが、鍵になるような気がします

ネタバレはなるべく避けて書いていきますが、未見の方はご注意ください。



あらすじ紹介

高校時代に帰宅部だった6人の仲間たちが、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに再会。久々に出会ったアラサー男たちは、披露宴と2次会の間の中途半端な時間を持て余しながら、青春時代の思い出話に花を咲かせる。彼らは今までと変わらず、これからもこの関係は続いていくのだろうと思っていたが、ある出来事が起きる。

出典:シネマトゥデイ

予告編は若干ネタバレがありますので、観ずに鑑賞した方が面白いと思います!

スタッフ、キャスト

監督・脚本 松居大悟
吉尾 成田凌
明石 若葉竜也
欽一 高良健吾
曽川 浜野謙太
ヒロナリ 藤原季節
ネジ 目次立樹
ヒロミ 飯豊まりえ
内田理央
松岡 城田優
ミキエ 前田敦子

物語の中心を担う6人は高校が同じかつ帰宅部という設定。
吉尾(成田凌)明石(若葉竜也)ネジ(目次立樹)欽一(高良健吾)が同学年で、曽川(浜野謙太)ヒロナリ(藤原季節)は後輩のようです。

その他、おでん屋さんの店主役として滝藤賢一さん、客役のパパイヤ鈴木さん、劇団界隈の大物っぽい感じの近藤芳正さん、警官役の岩松了さんと、個性的な方々が想像以上に癖の強いキャラクターで出演しています。

本作品で一番印象的だったのは、明石を演じた若葉竜也さん。
大人になっても少年っぽさを“引きずる”姿が、この映画の一つの肝だと思いますが、若葉さんの振る舞いには大人と少年が混ざり合った絶妙な温度を感じます。

映画『アリーキャット』(2017)の主演を務めた窪塚さんと降谷さんについて、赤山恭子さんが「コドナ」という言葉で表現していました。

『くれなずめ』の若葉さんに漂う雰囲気は、まさしく「コドナ」そのものです。

大人でも子供でもない「コドナ」な窪塚洋介×降谷建志が放つ『アリーキャット』ふたりで奏でた「運命」【インタビュー】

この後、本記事は感想部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



限りなく「男子」な映画

この映画を観て最初に思ったのは、限りなく「男子」な世界だなぁということです。

(その場にいない)女を平気でブスと呼び、内輪だけしかわからないネタで盛り上がり、下ネタも積極的に投下。いわゆる男子コミュニティのノリです。
もちろん同じレベルのことをしている女子の集団もあると思いますが。

僕の周りにもいましたよ。
トイレで手を洗う奴はあれを触ってる奴だという男子や、「脱ぐ」ことで何かを解決できると思っている男子、童貞か否かで物事を判別する男子も(これは女子も)いました。

『くれなずめ』は高校の仲良しグループ6人(全員が同学年でないところも面白い)がアラサーを迎え、友人の結婚式でふんどし一丁で余興をするお話です。

懸命に高校時代のネタを引っ張り出し、脱ぐことに解決策を見出し、当時と同じ温度感で笑い合う。
「男子」なあの頃と変わっていないことに安心し、あの頃を思い出す。そうだ、俺たちはいつまでも最高にバカな男の子だ!

『くれなずめ』で描かれるような男の内輪ノリには「男子ってバカだよね(笑)」論に委ねている部分が大きいと思うんです。

「男子」のくだらなさを笑えるか笑えないか、そのどっちかに尽きます。

彼らを愛でることができる人

結婚式の余興で上裸になったりパンイチになったりで踊りを披露する(主に体育会系のコミュニティに多い)人たちは、これまで何度も見てきました。

そしてその裸踊りに嬉々として盛り上がる人たちも当然います。やっぱり需要はあるわけです。

大学時代の友人女性は高校で野球部のマネージャーをやっていたそうで、「男子のみんなでバカやる感じが最高に好き。世の中の男で一番男子高校生が好き!」と言っていました。吉尾たちと同じアラサーとなった今でも、相手に求める基準は「男子高校生の輝きを失っていない人」でブレていません。

彼女いわく「女子同士ではできないバカ騒ぎ」が良いそうで、「ちゃんとバカできるって偉大だよ」とおっしゃっていました。

このように「男子ってほんとバカ(笑)」ってちゃんと(笑)を付けることができる人には、向いている作品だと思います。

彼らを笑えなかった人(私)

一方で、そのノリについていけない人には厳しいものがあります。自分はこっちでした。

先ほど書いたように、女をブス呼ばわりし、幼稚な下ネタを解き放つことは経験しました。経験したんですが、僕自身はそのノリを中学生で卒業してしまいました。『くれなずめ』を観ていると、えっ、その歳でまだそれやるの?って。
だから乗り切れませんでした。

「男子ってバカだよね(笑)」の(笑)はいつまでも付いているわけじゃないと思うんですよね。

自分の場合は高1の段階で、脱いだり下ネタを誇示したりする男子が「いやそういうの面白くねーから、だせーから(ガチギレ)」と女子(強めのギャル)に一喝されているのを見て、ああもうこのノリは高校では通用しないんだなと察しました。そんなことで女子に嫌われたくないですから、静かに封印しました。

明石(若葉竜也)が「女の店長って厳しいよな」って言った後に象徴的に描かれたうるさ型の美化委員・前田敦子(ミキエ)も紋切り型の「ちょっと男子!」でしたけど、あんな子がいたのも小学校まででしたね。中高は女子も男子も掃除なんて真面目にやっていませんでした。

野郎コミュニティ童貞

なぜ自分は合わなかったのか。そう考えると浮かぶのは、男子6人みたいな同質だらけのコミュニティに属したことがないからです。

『くれなずめ』の6人は同質の男どもの中で世界が完結していたと思うんです。

そこには異質な他者、例えば城田優が演じていた松岡くんとか、女子とかが介在しません。
彼らの“内輪”は同質の野郎ども6人にしか許されていない“内輪”なんですよね。

僕も吉尾や明石たちと同じように、高校では帰宅部でした。でもあんなに大勢のコミュニティっていうのはなくて、親友レベルと遊ぶ場合は大体二人か三人。

そもそも2、3人で喋ってても内輪ネタの振り合いとかにはならないんですよね。

それ以上のグループ行動になると大概女友達だとか、少し毛色の違う男友達とかが混ざっていました。

部活をやっていたらああいう内輪ノリを体験できたのかもしれないんですが、残念ながら『くれなずめ』の野郎コミュニティという面で僕は童貞なんですよね。

乗り切れなかったと偉そうに書きましたが、そもそも自分が彼らと同じ土俵に行き着いていなかったヒガみやコンプレックスみたいなのが、根っこにはあるんじゃないかっていう話です。

友達が少ないとも言い換えられます…

卒業しても増えも減りもせず、同じ6人で遊ぶことができる吉尾たちの友情は深い。本当は羨ましいですよ。マジで。

『佐々木』と『あの頃。』

『くれなずめ』で思い出すのが、藤原季節さんが出演していた『佐々木、イン、マイマイン』(2020)と、若葉竜也さんが出演していた『あの頃。』(2021)です。

ともに野郎どもの青春を描き、「脱ぐ」というお下品な持ちネタをかましてくる男子要素の強い作品でしたが、『佐々木、イン、マイマイン』の佐々木がその行動に至るまでの思考や、道化を演じて「脱ぐ」犠牲を払うことにより、利益を得られるというプロセスまで描いているのに対して、『あの頃。』の野郎どもはあくまでも自分たちの居心地の良い箱の中で馴れ合いをしているように見えました。

『佐々木』の場合は、完全な同質ではないんですよ。彼(佐々木)はヒエラルキーが他の友人に比べて低い位置にあったわけです。

担がれて脱いで、盛り上げて。消費されて。
ハタから見てる女子目線からすると「男子バカだな〜(笑)」なのかもしれませんが、実はその主語は男子ではなくてあくまで佐々木なんですよね。

いましたよ。佐々木みたいなやつ。
共感ではなくて、佐々木というキャラクターを自分の高校生活に共有できた感覚です。

だから映画の中の佐々木は、いつの間にか俺たちの佐々木になっていました。

一方『あの頃。』では、ハロオタの男という同質の世界の中、中学10年生という触れ込みで、いい大人が狭い半径の共通言語で悪ノリに興じる光景が出てきました。

これを童心を忘れない愛すべき野郎どもと捉えるか、痛いと捉えるかは人それぞれだと思うんですけども、自分は後者でした。
共感性羞恥の痛さじゃなくて、何これ?何の罰ゲー見せられてるの?って感じのドン引きです。

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映画『あの頃。』ネタバレ感想|あややしか勝たん

2021年2月24日

『くれなずめ』のアラサー6人も『あの頃。』と同じで、中学生がそのまま15歳、年をとった感じでした。

僕は『あの頃。』の中学10年生!な内輪ノリも合わなかったので、逆に『くれなずめ』を楽しんだ方は『あの頃。』も合うかもしれませんね。

印象に残ったセリフ

高校時代と同じようにバカをする『くれなずめ』の6人でしたが、映画序盤で曽川(浜野謙太)明石(若葉竜也)にぽろっとこぼしたセリフは印象に残りました。

「余興があって助かりますよね。何話していいかわかんないじゃないですか」

こんなことを言ってたと思うんですけど、久しぶりに集まった友人の会話の糸口ってそんなものだと思うんですよ。
最近どうなの?の近況報告で持つのはせいぜい10分。あとは結構しんどいんですよね。昔はあれだけ話すことが尽きなかったのに。

あの頃の勘、ノリを取り戻すのも時間がかかるし難しい。わちゃわちゃと賑やかしく進んだ序盤パートで、現実感を漂わせる言葉でした。

余興のリハでやたらと仕切りたがり、式場の方に迷惑がかかるから!と気遣いを見せるヒロナリ(藤原季節)も印象的でした。式場の美人コーディネイター(飯豊まりえ)への好感度を上げたいという下心が透けたものでしたが、あの場でカッコつけたくなるのは凄くわかります。

僕も二次会の幹事をやったときに、お店のプランナーさんの前で調子に乗ったことがありました…

ここまでグダグダと書いてきましたが、『くれなずめ』において高い濃度の「男子」はあくまで前フリです。

過去なんて書き替えろ。引きずることを恐れるな。
その言葉に込められた真意とはーー

未見の方は是非劇場で楽しんで観てきてください!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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