こんにちは。織田です。
今回は2021年公開の映画『あの頃』をご紹介します。
今泉力哉監督。主演に松坂桃李さん。
ハロプロ(ハロー!プロジェクト)に魅了された人たちの“あの頃”を描いた作品と聞いて、胸を高鳴らせ馳せ参じて参りました…!!
スタッフ、キャスト
監督 | 今泉力哉 |
原作 | 劔樹人 |
脚本 | 冨永昌敬 |
劔樹人(ツルギ) | 松坂桃李 |
コズミン | 仲野太賀 |
ロビ | 山中崇 |
ニシノ | 若葉竜也 |
ナカウチ | 芹澤興人 |
イトウ | コカドケンタロウ |
アール | 大下ヒロト |
靖子 | 中田青渚 |
奈緒 | 片山友希 |
馬場さん | 西田尚美 |
原作者と主人公の名前が同じことからもわかるように、原作は劔樹人さんの自伝的エッセイコミック『あの頃。 男子かしまし物語』です。
- ツルギ:松浦亜弥
- コズミン:藤本美貴
- ニシノ:後藤真希
- ロビ:石川梨華
- ナカウチ:楽曲推し
- イトウ:全推し
あらすじ紹介
大学院受験に落ち、恋人もおらず、金もない劔(松坂桃李)。どん底の生活を送る中、松浦亜弥の「桃色片想い」のミュージックビデオを目にしたのがきっかけで、ハロー!プロジェクトのアイドルたちの熱狂的なファンになりオタ活に没頭する。藤本美貴推しで、プライドが高くてひねくれたコズミン(仲野太賀)をはじめとするオタク仲間と「恋愛研究会。」を結成し、トークイベントやライブの開催、学園祭でのアイドルの啓蒙活動に励む劔。だが仲間たちは、アイドルよりも大切なものを見つけて散り散りになっていく。
松浦亜弥とあの頃
予告編やあらすじでも紹介されている通り、『あの頃。』はツルギくん(松坂桃李)が「あやや」こと松浦亜弥さんに魅了されて楽しい沼へと足を踏み入れていく物語です。
設定は2004年。2001年に「ドッキドキ!LOVEメール」でメジャーデビューを果たし、最大のヒット曲「♡桃色片想い♡」や「Yeah!めっちゃホリディ」が2002年に、「ね〜え?」が2003年にリリースされたことを考えると、彼女がトップスターになった後の時期になります。少し遅いんですよね。
んでですね。松坂さんと同じように僕たちにとっても、中学生時代は特に、松浦亜弥さんをはじめとしたハロプロは特別だったんですね。2010年前後のAKBや、近年の乃木坂とかと同じ感じでしょうか。
うちの中学では男女問わずみんなが各々の「好き」な人を持っていて、後藤真希さんだったり、なっちだったり、ミキティだったり、加護ちゃんだったりしたわけです。
それが僕の場合はあややでした。
もちろん『あの頃。』のみんなに比べたらファンとかオタクとか言えるような立場ではないんですけども、通学時に聞くMDには「♡桃色片想い♡」も「Yeah!めっちゃホリディ」も「100回のKISS」も入っていました。一番好きなのは「LOVE涙色」です。(聞いてない)
だからツルギくんと同じように桃色片想いの「あーの人には、は、は、は、は、は、は、は」のリズムに合わせて音量をあげることもやってましたし、Yeah!めっちゃホリディで「故障だってさ。」の張り紙をエアコンにつけてリズムを刻んだツルギくんにすんげぇすんげぇすんげぇすんげぇ共感しました。
(Yeah!めっちゃホリディのMV観てみてください)
「あややはスターなんだから、いつも松浦亜弥なのが当たり前じゃないですか」
ツルギくんの言ってたあのセリフも染みます。ドラマ『天使の歌声』とか映画『青の炎』を見てディスってたうちのオカンに100回言って聞かせてほしい。
選挙の日は投票行って外食するんだでお馴染みの「ザ☆ピ〜ス!」も我々世代にはど真ん中でしたし、ごっちん(後藤真希)推しのニシノ(若葉竜也)が真顔でキレキレのダンスを踊る姿にも感動しました。
後藤真希さんはよく「ゴマキ」って表記されますけど、あの呼び方は結構地雷だよ、っていうのを同級生に教えてもらったあの頃。
vodafoneの携帯とmixiが彩ったあの頃。
愛を叫ぶ映画ではない
一方で多分、この映画は「オタクがいかに推しを愛しているか叫ぶ映画」ではないんですよね。
“あの頃”ガチ勢だった人には、あるいはハロプロ映画だと思って観た人には物足りなかったというか、あれ?こういう感じ?って風に受け取られるのではないでしょうか。
どのようにしてアイドルにハマっていったのか、メンバーがどんなバックグラウンドを持っているのか、その中でお金も時間も全振りして捧ぐオタクの深度を試したり測ったりする映画じゃ多分ないんですよ。
個人的には学祭の「ザ☆ピ〜ス!」が盛り上がりとノスタルジーのピークでした。コズミン(仲野太賀)の問題児ぶり(いい大人ですが笑)が物語の中心になっていく辺りから何となく他人事として捉えてしまいました。
ハロプロあべの支部の内輪ノリは正直エグかったです。辛いことも転化して笑い飛ばそうぜということかもしれないですけど、あれについていけるお客さん凄いなって感じ。
コズミンは確かにクソ野郎なものの、あの公開処刑はさすがに悪趣味で結構引きました。中学10年生?確かに過ぎるわ。あのノリは中学でやりきったぞ…。
コズミン(仲野太賀)があいつら無職のくせにとか何とか言ってましたが、じゃあ無職な彼らがどれくらい愛を費やしてるのか。固定ファンのついたトークショーを実施するほどのサークルでありながら、じゃあどれほどに熱意をほとばしらせているのか。
そういうのを観たかったですけど、多分そこはこの映画の主題ではないんでしょう。
ハロプロ知らなくても大丈夫だよという感想をTwitterでよくお見受けしましたが、もしかしたら知らない方がフラットに楽しめるかもしれませんね。
僕は前半部分で高まりすぎた分、そこからの落差で冷めてしまったので…。
尊き推しよ
そんな映画『あの頃。』では「“推し”がいる人生は最高で最強」なるフレーズが使われています。
推しは尊いというのは推すべき対象を持つファンにとって真理かと思います。それを「推しがいるから生きていける」とか「どれほど尊い存在であるか語り尽くす」のではなく、むしろ「推しを共有する仲間と出会えたことが尊いです」と描いているのが本作品ではないでしょうか。
「#推しに出会って仲間ができた。」
それも確かに尊きことです。
“あの頃”から時を重ねて、仲間たちは散り散りになり、ある者はフィギュアに移行し、ある者はあの頃よりも楽しいものを見つけ。ハロオタとしての濃度が薄まっていきましたが、話題に事欠かないコズミンのこともあり彼らは依然として繋がり続けていました。で、たとえ推しへの情熱が衰えたとしても、6人+アールを繋ぐものはやっぱり好きを共有できたこと。だから尊い。
好きの濃度とか関係ないんですよね、きっと。
思えば『あの頃。』ではファン同士でマウントを取ることが全くありません。
僕自身「推し」が何かと言うと、小さい頃から応援している浦和レッズっていうサッカーのクラブなんですけども、浦和に限らずサポーターの中では古参とか新規とかニワカとかそういう格の括り方をすることがあります。これは多分他のジャンルでも言えることです。
でもハロプロあべの支部のメンバーたちに歴や知識の差をひけらかす人はいなかったし、ツルギがナカウチ(芹澤興人)やコズミンに対してもタメ語だったり丁寧語だったりと、ここには上下関係っていうものが存在しない。優しい世界。
『あの頃。』は思っていたのと違ったというか、何かを熱狂的に好きになった自分の熱量を上手くシンクロすることができなかったのが悔しいですね。
▼個人的によく使ってるLINEスタンプのシリーズ。汎用性高くて好きです。笑
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。