こんにちは。織田です。
今回は2021年の映画『街の上で』をご紹介します。
『愛がなんだ』、『あの頃。』などの今泉力哉監督のオリジナル脚本による恋愛群青劇。
主演は上記2作品にも出演していた若葉竜也さんが務めました。
そんな『街の上で』は、人間の体温が全編に宿ったハートフルな映画です。
好きだなぁって思えるポイントが人それぞれに、たくさん見つけられると思います。
あらすじ紹介
下北沢の古着屋に勤務している荒川青(若葉竜也)は浮気されて振られた恋人を忘れることができなかった。ときどきライブに行ったりなじみの飲み屋に行ったり、ほとんど一人で行動している彼の生活は下北沢界隈で事足りていた。ある日、美大に通う女性監督から自主映画に出演しないかと誘われる。
『街の上で』は東京・下北沢を舞台にしていて、映画では実在のお店も登場します。
とはいえ、下北沢に土地勘のない人でも全く問題なく楽しめる映画でした。
スタッフ、キャスト
監督 | 今泉力哉 |
脚本 | 今泉力哉、大橋裕之 |
荒川青 | 若葉竜也 |
川瀬雪 | 穂志もえか |
城定イハ (大学4年) |
中田青渚 |
田辺さん (古書店員) |
古川琴音 |
高橋町子 (映画監督) |
萩原みのり |
バーのマスター | 小竹原晋 |
カフェのマスター | 芹澤興人 |
朝子 (古着屋の客) |
上のしおり |
茂 (古着屋の客) |
遠藤雄斗 |
警官 | 左近洋一郎 |
間宮武 | 成田凌 |
若葉竜也さんと成田凌さんといえば『愛がなんだ』での共演を思い出した方もいるのではないでしょうか?
中田青渚さんや芹澤興人さんは『あの頃。』に続く出演ですね。
映画のネタバレ感想
以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。
『街の上で』の魅力だと感じたポイントをいくつかに分けて紹介します。
- 下北沢の舞台設定
- 選ぶ・選ばれること
- 今泉監督の描く女性キャラクター
- 若葉竜也の立ち位置
今回はこの4つのテーマから見ていきたいと思います。
置き換え可能な「シモキタ」
ときどきライブに行ったりなじみの飲み屋に行ったり、ほとんど一人で行動している彼の生活は下北沢界隈で事足りていた。
引用させていただいたシネマトゥデイさんのあらすじにもある通り、映画『街の上で』は東京の下北沢が舞台になっています。
下北沢は古着、演劇、音楽、アートなどサブカルの街として有名。
本作品でも主人公の荒川青(若葉竜也)が古着屋に勤めていたり、小劇場と舞台女優についておまわりさん(左近洋一郎)が詳しかったり、雰囲気のあるライブハウスがあったり、映画専攻の大学生がいたりと、サブカルの街・シモキタを落とし込んだ文脈にはなっていました。
いわゆるオフィス街とは異なり、サブカルに代表される「好きなこと」で生きていく人たちを受け入れ、応援していく。そんな街です。
カフェのお客さん(未羽)が魚喃キリコの漫画の聖地巡礼を試みたり、その彼女をカフェ店員(春原愛良)が案内したりと、ステータスが確かに存在する街であり、カフェのマスター(芹澤興人)が「街はどんどん変わっていく」というように刻一刻と変化を続ける街でもあります。
そんな個性の強い街・下北沢を確かに舞台にしてはいるものの、『街の上で』はシモキタ映画ではありません。
下北沢を知らない人でも、きっと自分のことに置き換えられます。
行きつけの店、なじみの人々
主人公の青(若葉竜也)には行きつけのお店がありました。
それは田辺さん(古川琴音)という店員が働く古書店ビビビであったり、青と元カノ双方の事情を知っているマスター(小竹原晋)がいる飲み屋だったり、話好きのマスター(芹澤興人)がいるカフェだったりします。
本日12月1日は、映画『街の上で』竹原役の芹澤興人さんのお誕生日です!!!おめでとうございます🌸
今泉力哉監督作品の常連であり、本作では主人公・青が通う下北沢の喫茶店の店長という役どころ。ロケ地は曽我部恵一さんがオーナーを務める「CITY COUNTRY CITY」です。パスタが絶品です! pic.twitter.com/tUxpfIll5m— 映画『街の上で』|絶賛公開中! (@machinouede) December 1, 2020
映画を観ている時は、青のことを「行きつけのお店がたくさんあっていいなァ!!」って思ったんですけど、実は別に下北沢じゃなくても置き換え可能なんですよね。
なじみのお店は何処でも、誰でも作ることができますし、そこで店員さんや常連さんと“なじむ”ことも誰にでも許された権利です。
常連の中にジモティーがどれくらい介在してくるかの違いでしょう。
飲み屋でどっかの誰かの恋バナに盛り上がり、詳しくなり、酔いも味方してああだこうだと論じる。そんな経験があるのは青だけではないと思います。つい2年前まで僕も北千住で同じようなことをしていました。
コロナのご時世では難しくなってしまいましたが…。うぅ憎い。
選ばれる側の彼は
今泉監督の恋愛映画では、『サッドティー』が特に印象に残っていました。
「好きってどういうこと?」を観る者に問いつつ、多種多様なキャラクターがそれぞれの「好き」を演じていく。ベッドシーンもキスシーンも使わない、優しさあふれる色恋の物語でした。
映画『街の上で』でも、「好き」という恋慕の矢印がいろんな人物を通して描かれています。
- 青(若葉竜也)→元カノ・雪
- 雪(穂志もえか)→今カレ
- 田辺(古川琴音)→カワナベ(?)青(?)
- 城定(中田青渚)→「2人目の恋人」
- 茂(遠藤雄斗)→「テラダさん」
- 朝子(上のしおり)→茂
- 警官(左近洋一郎)→姪
- 高橋(萩原みのり)→青への映画出演のラブコール
- 根岸(タカハシシンノスケ)→高橋
この「好き」は片想いの矢印もそうじゃないものもあると思いますが、別れ話が浮上した青と雪、また青の古着屋にやってきた茂と朝子のツーペアの恋慕に関しては上下の関係も含まれていました。
言い換えると、選ぶ人と選ばれる人の関係です。
選ぶ立場
まずは青と雪のお話から。
雪(穂志もえか)は新しい男に浮気をした立場でありながら、青に別れを迫ります。ソファの上から、床に座る青に向かって別れさせてと迫ります。
別れるか別れないかのイニシアチブを握って然るべき立場に映る青くんは、選ばせてもらえないんですね。
この女、どの口が言ってんのと一瞬思ったんですけど、恋人が別れることってやっぱりそれなりに手間がかかるわけですよね。
新しく好きな人ができました、ハイそうですか、にはなかなかならない。自然消滅にだって時間がかかる。
だから「新しく好きな人ができた」っていう自分都合にプラスして、雪は浮気という「青にマイナスの感情を抱かせる」相手都合の二段構えでいったんでしょうね。
浮気で既成事実を作って相手に別れるしかねぇと思わせるんですよ。
残酷だけど、したたか。
別れを切り出してほしいのに青は別れたくないというもんだから、結局青がフラれたみたいな形になりました。
また、青の古着屋に訪れた若い男女にも上下関係が見て取れました。
男の子・茂くん(遠藤雄斗)には「テラダさん」という好きな子がいて、その子に告白するための勝負服を選びに仲良しの朝子ちゃん(上のしおり)とやってきたと言います。
茂は、朝子が自分のことを好きだとはわかっていながらも、「テラダさんが1位で朝子は2位なの。明確な2位」と本人の前で言い放ち、テラダさんとうまく行かなかったら朝子と付き合うとのたまいます。
朝子も朝子でそんな茂を止めることはできずに、彼がドラフト1位指名のテラダさんと交渉決裂することを祈ることしかできません。
服の二択で迷う茂に、サイズの合っていないラグランTシャツを「こっちの方がいいと思う」と戦略的に伝えますが、あえなく失敗します。
ただ、この二人は終盤で仲睦まじく歩いている姿を青たちが目撃しており、結局茂はテラダさんとうまく行かずに朝子と付き合ったであろう未来が優しく、さりげなく描かれていました。
選ばれる立場
青(若葉竜也)に話を戻します。
雪(穂志もえか)に「選ばれる立場」であり、選ばれなかった青はその後、雪の今カレと偶然出会っています。その彼が雪の今カレであることを青は知る由もありませんでしたが。
そこでも雪と青のとき同様に、椅子に座る今カレ、床に座る青という上座・下座が描かれていました。
大学生の映画監督・高橋町子(萩原みのり)に請われた映画出演も印象的です。
オファーを受けた青は最初「選ぶ」立場にあったものの、拙い演技から出演シーンをカットされて「選ばれない」立場になります。
そんな風に主導権を持てず、なおかつ「選ばれない」青でしたが、雪は結果的に今カレくん<青の判定を下します。
そこでようやく青が「選ばれた」ことも、この映画の優しさだと思いました。
ここで思うのが、結局、選ぶ・選ばれる、付き合う・付き合わないは、「好き」って伝えないと始まらないんですよね。
大学生の助監督・根岸くんが高橋監督に「俺は今でも好きだよ」と言っていたことも、おまわりさんが道行く市民に自分の姪に対する三親等の恋慕を語ったことも、恋する茂くんと朝子ちゃんも、みんな勇気を出して「好き」を言葉にしています。
その「好き」には、想い想われる誰かを切り捨てる多少の痛みが伴うこともあれば、「好き」を伝えることで生じる痛みもあるでしょう。
けど、そんな痛みに向き合って雪は元サヤに戻りましたし、彼女が改めて実感した居心地の良さという点などから見ても「好きってどういうこと?」に一つの答えを示している映画だと思います。
今泉監督の描く女性
続いてキャラクターについて感想を書いていきます。
個人的に今泉力哉さんという監督は、女性をすごく魅力的に描写する方だと思うんですよ。
『サッドティー』では永井ちひろさんが演じた夕子というキャラクターに他人事とは思えない距離感の近さを感じたし、青柳文子さんの棚子という女性にはガチで惚れそうになりました。
『愛がなんだ』では、山田テルコ(岸井ゆきのさん)の醸し出す圧倒的なめんどくささと一途さに、愛しき共鳴が鳴り止まず、大変なことになりました。
もちろん俳優さんの個性・特長も大いに関係してくると思うんですけど、それを引き出すのも含めて、今泉監督の描く女性キャラクターは素敵だなと思ってきました。
そしたらです。今回の『街の上で』はさらに凄かったです。
映画『街の上で』、公開まであと三週間。#穂志もえか#古川琴音#萩原みのり#中田青渚 #街の上で #4月9日公開 pic.twitter.com/N286gjPxnP
— 映画『街の上で』|絶賛公開中! (@machinouede) March 19, 2021
細部まで際立つ個性
『街の上で』は、物語の軸に関係してこないキャラクターに至るまで、女性の個性が際立つ映画だと思うんです。
自主映画の学生を含めて男性キャラが全体的に野暮ったい一方で、女性キャラクターは髪型、服装、言動からそれぞれのバックグラウンドを鮮やかに示してきます。
雪の「食べてみ?」に痺れた
例えば雪(穂志もえか)には「笑わない」、「主導権を握りたい」、「好戦的」みたいな要素を感じたんですが、青と城定(中田青渚)と城定の元彼(とマスター)とで繰り広げる修羅場激論バトルに火をつけたのは彼女だと思います。
「お前誰だよ!」
「ユキさんとか馴れ馴れしく呼ばないで?」
こんなようなことを言ってたはずです。初めて会った人にこんな言い方できる人ってなかなかいないと思うんですよね。つええわ。
そんな口の少々悪い雪が、最後には賞味期限切れであろうチョコレートケーキに最初にチャレンジして、「食べてみ?」ですよ。グッときましたよ。
高橋の本気と落胆
拙すぎる青の出演シーンを映画からカットする判断を下した高橋(萩原みのり)も、ただの非情な監督じゃないと思うんです。
高橋からしてみても自分がこれだと思って抜擢したのにガッカリしたとは思いますよ。自分が信念を持って決めたことを否定されるのが嫌だと常々言っていただけに、プライドが傷ついたんじゃないでしょうか。
内心ブチ切れてたはずです。それでも明るくOKを出して青を諦めるのは、彼女にとって自分の失敗を認める、凄く勇気のいる判断だったと思います。
田辺の素敵が過ぎる
そんな高橋に「なんで荒川さんのシーンカットしたんですか!」って食ってかかったのは古書店ビビビで働く田辺(古川琴音)。
個人的にヘアスタイル含めて田辺のコーデがめっちゃ好きです。
『泣く子はいねぇが』でもそうだったんですけど、古川さんはキャラクターの持つ温度感を自分の領域に引き込むのがめちゃくちゃ上手いと思います。声色の使い分けというんですかね。発し出される言葉の持つ温度の違いが素敵。
田辺は青の演技シーン練習の手伝いという共同作業をこなして好意をほのめかす一方、青の不用意な一言でフルシカトモードに入ったりもしていました。
朝子もカフェのあの子も
際立つ個性はメインキャラクターだけにとどまりません。
前の項でも述べた古着屋の客・朝子(上のしおり)は茂くんへの複雑な想いと彼との未来が明示されていましたし、芹澤興人マスターの営むカフェで働く女の子(春原愛良)も、下北には詳しいけど住まいは厳密には下北沢ではないみたいなニュアンスを話すくらいには細かい設定がされています。
魚喃キリコの聖地巡りに挑戦しているカフェのお客さん(未羽)もそうです。
風俗店で青を担当した女性も、青の口からその時のプレイやシャワーの様子が語られ、後日ラーメン屋での再会に至ってはシーンとして描かれています。
また青がライブハウスの喫煙所でもらいタバコをした女も、見ず知らずの男にタバコを2本ねだる程度にはキャラクターが強いですし、青の部屋の灰皿に立てかけられたメンソールのタバコという形でも残っています。
結果的には物語の本筋に入らなかったキャラクターにも、これほど濃く色づけされている映画はそうそう無いんじゃないでしょうか。
モブの女性がマジでいない。それぞれの物語、未来をこちらが想像するほどには濃度の詰まったキャラクターたち。
そんな中で一番印象に残ったのは、青と“友達”になった城定イハ(中田青渚)でした。
圧倒的中田青渚
本日1月6日は、映画『街の上で』城定イハ役の中田青渚さんのお誕生日です!!!おめでとうございます🌸
まもなく放送開始となるNHKドラマ「ここは今から倫理です。」に出演予定のほか、今泉力哉監督『あの頃。』にも出演されていますのでお楽しみに💫 pic.twitter.com/7tZ0tKApNf— 映画『街の上で』|絶賛公開中! (@machinouede) January 6, 2021
「城定イハです。城定秀夫監督と同じジョウジョウです」
映画界隈っぽさ溢れる比喩的な自己紹介ととも、に青(若葉竜也)との距離を近めていった城定(中田青渚)。
会ったその日に青と飲み屋で話を咲かせると、二次会には行かず、二人で喧騒を抜けて数時間前までは“控え室”だった彼女の自室へと向かいます。
城定はアウェイとホームという風な言い方をしていましたが、比喩的なホームではなくて文字通りのホーム(自宅)でしたね。青にとってはアウェイというか、ビジターという言葉がしっくり来ます。
友達の距離感
城定の自室で、二人はお茶をおともに二次会を始めました。
青は城定の問いに答える形で、元カノ・雪との現状や、風俗に行った時のエピソードを赤裸々に話していきます。
対する城定も今まで付き合った人は3人、一番好きなのは2番目の十両力士、1番目は無かったに等しい存在、3番目はめんどくさい男という自らの恋愛遍歴を語っていきました。
「横綱→大関→関脇→小結→前頭。ここまでが幕内。その下が十両。一般常識やで?」
一般常識かどうかはさておき。
十両の下は幕下と言われるのですが、お相撲さんは十両以上になると初めて月給をもらえます。結構な額です。
「関取」と呼ばれるのも十両以上からです。
映画の撮影控え室だった数時間前はソファが置かれていた城定家のリビングでしたが、今回は城定も青も床に座る形で膝を突き合わせて語っています。
間宮(成田凌)や雪との会話の時のような、位置的な高低は青にありません。
この距離感も、二人が友達関係になる過程を補強していたと思います。
中田青渚と関西風味
城定はどうやら、関西出身の大学4年生のようです。初めましての挨拶に漂う関西風味。
ちょいちょいタメ口になるのも最高でしたし、彼女のイントネーションに青が引きずられる場面も素晴らしすぎました。
中田青渚さんについては去年『ミスミソウ』を観てからというものの、魅了され続けて追っているのですが、今回の『街の上で』もめっちゃ良かったです。
兵庫県出身の中田さんは、『街の上で』に限らず関西出身の役が結構多いんですよね。
今泉監督の『あの頃。』(2021)では(多分)大学生役として、主人公の松坂桃李さんに関西弁でコミュニケーションをとり、
『写真甲子園 0.5秒の夏』(2017)では高校写真部の全国大会に出場する、大阪代表校の生徒を演じています。
さらに『君が世界のはじまり』(2020)では、大阪郊外の女子高生として切れ味鋭いトークを松本穂香さんと繰り広げています。
どのキャラクターもそれぞれ違うパーソナリティがある中で、中田青渚さんは、気づいたら懐に飛び込んでいるような距離感の縮め方が抜群です。
『街の上で』で言えば、成り行きで3人目の彼氏と付き合った城定と、「好きじゃなければ付き合わなきゃよくない?」な青は恋愛観的に結構違うと思うんですよ。
青としてはビジターの彼女の家に急にお邪魔することになり、戸惑いもあったはずです。
でありながらも、城定は青との壁を少しずつ崩していき、青はお茶のおかわりを彼女にもらうようになり、彼女の家に泊まることになり、友達になりました。
お酒も介在させずにこれは凄いと思いますし、こんな魅力的な城定と友達になりたいなと思ったのは自分だけではないはずです。
若葉竜也の絶妙な脱力感
ここまで女性キャラクターの魅力を書いてきましたが、その魅力を引き立たせていたのは青(若葉竜也)の引き算感にもあると思っています。
バッファロー・ビルズ(NFL)やミネソタ・ティンバーウルブズ(NBA)のTシャツを着て、ゆるりと過ごす青。古着屋店員としてあり得るセレクトではありますが、そこまで尖ったお洒落ではありません。
個々の違いを表現する程度には個性的な女性たちに比べて、青の格好は野暮ったくも映ります。
でも、青がただの野暮ったくて垢抜けない人ではないという、人物の造成が凄いんですよね。
例えば雪の浮気が発覚したシーンでは「別れたくない!」と意地になる子ども味がありましたし、雪に言われて素直に風俗に行き、なおかつその話を他人(城定)に自身の社会勉強的な感じで話す一幕もありました。多分凄く素直な人。
一方で彼がタバコをもらったメンソールの女に対しては、ライブハウスで気になってずっと見つめていたり、ラーメン屋で例の風俗嬢をガン見したりと、日常生活で女性を結構観察している(目で追っているとも言う)男性であることもわかります。
自分の話だけじゃなくて、城定にあなたの恋バナも聞かせてよと振るあたりも、余裕が感じられますよね。脱力感がありながらも、決して世間ずれしているわけでも悲壮感があるわけでも童貞感があるわけでもない。
(27歳って言っていたでしょうか?)青が彼なりに積み重ねてきた、年齢の深みと優しさを感じさせる若葉竜也は、彼に関わる女性たちの魅力をさらに引き立たせていたと思います。
若者の色恋沙汰に巻き込まれたバーのマスター(小竹原晋)も、保護者と外野の間に立つような絶妙な立ち位置が素晴らしかったです。
『街の上で』ではあくまでも対面による接点から物語の糸が広がっていました。
公開された2021年現在ではなかなか再現できないようなコミュニケーションもたくさんあります。
そんな現代だからこそ、この映画を観て温まり、笑っていたい。そう思える優しい映画でした。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。