映画『まともじゃないのは君も一緒』ネタバレ感想|成田凌と一緒に引き笑いが止まらない

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こんにちは。織田(@eigakatsudou)です。

今回は2021年公開の『まともじゃないのは君も一緒』をご紹介します。
前田弘二監督。主演は成田凌さん清原果耶さん

前田弘二監督というと、2011年の吉高由里子さん主演映画『婚前特急』がもう最高に好きだったんですよね。今でも1年に1回とか、定期的に観直しては笑って元気をもらえる作品です。
(感想はこの記事の最後に記事のリンクを貼ってあります)

期待に胸を高ぶらせて観てきたわけですが、いやはや、期待に違わず面白かったです!コロナ禍であまり声を出せない時代ですけど、マスクの下でずーっと笑いをこらえていました。ツボ刺激されまくりました。気持ちいい!!



あらすじ紹介


予告編
動画内のテロップも最強です。映画を観た人が観ても面白いはず!

予備校で数学を教える大野康臣(成田凌)は、独身で恋人もいないが、結婚願望は持っていた。しかし、女の子とデートをしてもコミュニケーションがうまくできない。康臣は自分のことを普段から「普通じゃない」と言う教え子の秋本香住(清原果耶)に、どうしたら普通になれるか教えてほしいと頼み込む。

出典:シネマトゥデイ

スタッフ、キャスト

監督 前田弘二
脚本 高田亮
大野康臣 成田凌
秋本香住 清原果耶
君島さん 山谷花純
柳くん 倉悠貴
宮本功 小泉孝太郎
戸川美奈子 泉里香

前田監督と脚本の高田亮さんは『婚前特急』、『わたしのハワイの歩きかた』に続いてタッグを組んでいます。期待が高まります。

センセイとキミ

成田凌が演じる大野康臣は数学一筋で生きてきた予備校の講師。その生徒として秋本香住(清原果耶)が講義を受けています。予備校といっても教室で何十人もの生徒が机を並べる形ではなくて、個別や少人数グループの授業のようで、香住は大野にマンツーマンで教えてもらっています。
大学時代に少し個別指導塾のアルバイトをやっていたんですが、まさにあんな感じでしたね。

この大野と香住、実はそんなに役名は映画において重要ではなく、香住は大野のことを「先生」、大野は「キミ」もしくは「秋本さん」と呼びます。この記事でも大野康臣(成田凌)については「先生」という表記をさせていただきます。

この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

前田弘二監督の会話劇

最初に紹介した前田弘二監督の『婚前特急』(2011年)は、吉高由里子演じる主人公が5人の彼氏くんをキープするというラブコメでした。この吉高さんがまあ強烈なマシンガントークを繰り出し、そのリズムの良さにぐいぐい引き込まれ、とっても大好きな作品になりました。

前田監督と脚本の高田亮さんは、登場人物が対面で行うハイテンポな会話の掛け合いがめちゃくちゃ上手いと思うんですよね。『婚前特急』ではそれが吉高由里子であり杏であり、浜野謙太であったわけですが、今回の『まともじゃないのは君も一緒』の成田凌清原果耶も圧倒的でした。

成田凌の使い方

成田凌という俳優さんは本当に色々な役柄に染まれる方で、『さよならくちびる』のように骨太な男を演じたかと思えば、『窮鼠はチーズの夢を見る』では女優賞ものの繊細な役をこなし、また『スマホを落としただけなのに』ではクレイジーなサイコパス(意訳)に染まりきっています。

この『まともじゃないのは君も一緒』の大野センセイは、数学に人生を捧げ、「普通」や「まとも」がわからない世間ズレした予備校講師。教え子(日々美思)からかけられた「好き」という量的に測れない情愛に対しても「定量的」という言葉を用い、ロジックにこだわっています。『センセイ君主』の弘光センセイや『博士の愛した数式』の博士とはまた違うタイプの数学オタクですね。

この大野先生、言われた言葉をいちいち反復する癖がありました。まあこれは僕もたまにやってしまうんですけど、結構相手のイラッとポイントに火をつけてしまうようで、香住(清原果耶)も聞き返すのをやめてと言っていましたね。
相手の言葉のニュアンスを受け取るのも苦手なようで、二人はなかなか会話が噛み合いません。

数学オタクの成田凌先生は、普通の恋愛駆け引きばかりではなく、食材に対しても無頓着。小料理屋で無垢な瞳を輝かせて、白子やイクラ、オクラを「これは何ですか」?と訊く予備校講師よ。カウンターの食事シーンは『窮鼠はチーズの夢を見る』で成田凌が演じた今ヶ瀬を彷彿ともさせましたけど、今回の大野先生は今ヶ瀬と違って相手に対する下心も余裕もありません。いやはや、本当に何でもできますねこの方。

で、ちょっとというかだいぶ世間ズレしてる先生は、「番号教えてください。携帯持ってますよね?」という香住の問いかけにツボって笑います。今どき携帯持ってない人っていないでしょ、という彼のツボもさることながら、泣いてるような引き笑い。うわぁこの人こういう笑い方するんだ……。

スーパーの2階で70%引きで買ったんだと嬉しそうに語る、裏地がチェックになったマスタード色の変なジャケット(香住評)を羽織り、彼は忖度も気遣いも一切ない評価を目の前のものに下していきました。香住の“作戦”で食器店を訪れ、凹凸が施された皿への感想を述べていた時はやばかったですね。映画館でもこらえきれずにアハハの声が生まれていました。

コミュ力は低いわけですけど、やっぱりオタク特有の早口というポイントはきっちりと押さえていて、自分の語れるフィールドになると途端に雄弁になるのも見事です。

清原果耶と「あの女」

そんな彼のピントのズレをしっかり拾い、突っ込んであげているのが清原果耶の演じる香住でした。『宇宙でいちばんあかるい屋根』(2020年)でも的確なツッコミを見せていた清原さんでしたが、今回はちょっとレベルが違いましたね。

先生は顔もスタイルもいいのに勿体無いと上から目線で言い放ち、自分の利益(=意中の実業家・宮本/小泉孝太郎と近づくこと)のために、先生に恋愛指南をしていきます。

『婚前特急』では主人公(吉高由里子)が浜野謙太と石橋杏奈の仲を意地悪半分で取り持つシーンがありますが、そこにも似ています。

凄いんですよ彼女。
先生の言葉を一刀両断するテンポの良さ。隙あらば早口語りをする先生への「うるっさいな」。シラフ(JKなので当然お酒はダメ)でありながら立派にくだを巻く姿。軽蔑とドン引きのこもったジト目。小松菜奈に匹敵するんじゃないですかね、あの冷ややかな視線は。
しかもカラオケ上手すぎときたわけですよ。PUFFYをあんなに楽しそうに上手に歌ってる人初めて見ましたわ。

でもって、一番いいなと思ったのが、香住の多用していた「あの女」なんですよね。

香住は自らが好意を寄せる宮本(小泉孝太郎)の婚約者・美奈子(泉里香)「あの女」呼ばわりします。まあ彼女は恋敵の立ち位置なのでともかくなんですが、それだけにとどまらず、先生と行ったダイニングバーで引き合わせた社会人女性二人組を「あの女たち」と呼び、横浜・元町で道楽的な食器店を営む美奈子の姉(大谷麻衣)を「おばさん」と評します。1989年生まれでおばさんと呼ばれてしまう大谷さん…

「(あの)女」「おばさん」も、結構攻撃的なニュアンスを持つ言葉ですよね。“普通”だったら「女の人」とか「女性の人」とか、「おねえさん」とか言うことが多いんですよ、自分の周りの肌感覚として。でも彼女はそれを何のためらいもなく口にする。すごい言う。笑

別に“普通じゃない”わけじゃないんですよ。高校生とか大学生ぐらいの頃、自分の周りにも「あの女」ってきつめの言い方をする女子たちがいました。
こっちとしては少しハラハラするわけですけど、その子にとって「あの女」は別に味方でもないし友好条約を結びたいわけでもありません。“普通”より少しトゲが鋭いだけなんですよね。

ただしまあ、繰り返しますが、使うのに結構勇気のいる表現だとは思います。18歳の言葉って部分も含めて、あのセリフを用いた製作側は凄かったなと印象に残りましたね。

絶妙な返しと日常感

前田監督と脚本・高田さんの紡ぎ出す会話は、本当に返しが絶妙で心地良いです。大好き。

『婚前特急』同様、『まともじゃないのは君も一緒』は圧倒的にパワフルな掛け合いを見せてくれました。ツッコミ&反論もそうですし、女性たちの会話で主に使われる“同意”も目を引きました。

「わかるー」
「それな」

「わかるー」は先生と香住が訪れたダイニングバーで(無理やり)相席した女性2人組の会話にて。休みの日の過ごし方や趣味の会話のテンションを維持、加速させるかのように繰り出されました。それでいて空回り気味に場を回す香住と、温度差のある返答しかしない先生に対しては決して使われることのない「わかるー」。ああ無念。

「それなッ」は確か『ちはやふる 結び』でも菫(優希美青)と話していた女子生徒が使っていましたけども、『まともじゃないのは君も一緒』では、香住が属する仲良しグループの女子たちが君島(山谷花純)を「あのブス」と影で叩く際に使っていましたね。

会話を持続させるために、香住と先生の間では「反論」という手が主な一方で、“普通”の人たちでは本当に共感してるかどうかもわからないような「相槌」が重要になっています。相槌や共感表明は集団の中で生きていくための、人生の必須ポイントと言ってもいいかもしれません。

そんでこの仲良しグループは、香住いわく、いつもくだらない陰口を言って、いつも新しい陰口の対象を探しているわけです。声の届かないところで。いたいた、ああいう子たち。女子に限らずですけども。

ここも本当“それな”なんですが、そんな彼女たちの、安全で平和で臆病で鬱屈によどむ内輪の沼に、香住はぽちゃんと石を投げて波紋を投ずるんですね。みんなが有る事無い事言ってディスっている君島に突撃して、彼女がガールズバーでバイトしているという噂の真偽を確かめに行きます。

最初はあんた誰状態になりながらも、君島さん、彼氏の柳くん(倉悠貴)と親交を深めていくことになった香住。君島さんも柳くんも普通に良いやつだったんで香住にとっては良い友達ができたなと思いますが、彼女があの後グループでハブられないかが心配でもあります。本筋からは外れた校内事情にも思いを馳せてしまうくらいには、日常みが溢れているこの映画。好きだなあ。

日常感って言うと、タバコを吸っていた宮本(小泉孝太郎)と香住の会話で出てきた「IQOS」っていう固有名詞にもびっくりしました。新時代の人間でもタバコは吸うんですね、加熱式や電子じゃなくて紙巻きを吸うんですね、っていう文脈でしたが、映画でアイコスの単語を聞いたのは多分初めてですよ。

好きになるってどういうこと?

『まともじゃないのは君も一緒』はラブコメである以上、「恋」とか「好き」の概念も当然出てきます。そしてその描かれ方は奇跡に導かれた特別なものでも崇高な哲学でもありません。実践的です。

美奈子(泉里香)は先生に“今日会って、明日も会いたいって想える人”だと恋愛観を話していましたし(良い言葉だ)、みんなが羨み嫉妬する君島&柳カップル(山谷花純/倉悠貴)は恋心の芽生えを“いつもと少し違う立ち位置から見る君”だったり、狭いキッチンでの“共同作業”だったりしたことを香住に明かしています。
美奈子のケースは少ない機会で相手の良さを見定めていく社会人の恋愛としてそうだなと思いますし、君島と柳は学校で毎日顔を合わせているような世代の一例としてまた然り。皆さんの周りにも文化祭の準備で恋に落ちるようなカップルがいませんでしたか…?

そんな恋する皆さまとは対照的に、恋愛上級者を自負する香住(清原果耶)は好きになるってどういうことなのかイマイチつかみかねていました。君島カップルへの反応を見るに、運命的な何かが引き起こすものだと考えていたのかもしれませんね。

先生(成田凌)に講釈を垂れながらも実は恋愛経験ゼロの香住は、意地悪な見方をすれば滑稽にも映ると思いますが、この映画では香住のことを皮肉ったりすることも同情することもありません。今のままじゃダメだから自身の考え方を“まとも”に軌道修正しようねという映画でもありません。彼女はまだ好きが“見えていない”だけで、だんだんとその輪郭が見えていく姿を中立的に描いています。

優しいんですよ。
美奈子と宮本、君島と柳のエピソード含めて優しい。

典型的なラブシーンは皆無な中、目を閉じて自然を感じる人たちの姿に口付けを想起させる切り口にも痺れました…!!

大好きな映画が、また一つ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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