映画『婚前特急』ネタバレ感想〜最上級のラブコメだぞ〜

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2011年の映画、『婚前特急』を鑑賞しました。主演は吉高由里子、監督は前田弘二。

5人の彼氏をキープするチエ(吉高)の、高慢で利己的で、それでいて見下していたはずの男への依存性を描いた作品。
リズムの良い台詞の掛け合いによってキャラクターの存在感が身近に感じられ、彼女たちの恋物語にものめり込む。これは面白かったです!

あらすじ紹介

24歳のOLチエは、時間を有効活用しようと5人の男性に“5マタ”をかけていた。しかし、親友(杏)の結婚に触発され、5人の恋人の査定を開始すると、本当に自分を愛してくれている人が誰なのかわからなくなっていく。

出典:映画.com

上のあらすじでは“5マタ”と書いてあり、実際その通りなんですけども、作品内でチエ(吉高)は友人に「マタとか言わないで、下品でしょ」と諫めています。

スタッフ、キャスト

監督 前田弘二
脚本 高田亮、前田弘二
池下チエ 吉高由里子
浜口トシコ
田無タクミ 浜野謙太
西尾みのる 加瀬亮
出口道雄 青木崇高
三宅正良 榎木孝明
野村健二 吉村卓也
後輩・堀 宇野祥平
トシコの夫 吉岡睦雄
奥田ミカ 石橋杏奈
この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

彼氏5人をキープする主人公

主人公のチエ(吉高由里子)は、美人で仕事もできる女性。ホンダのスクーター、クレージュ・タクトに乗って営業先に向かっています。
そんな彼女には5人の彼氏が。コインケースに入った5本の合鍵には、それぞれ番号が振られたキーカバーがついています。

京王線の駅(中河原?)のホームで、イケメン男子・野村くん(吉村卓也)と惜別のディープキスをかわすチエ。良い雰囲気ですね。
しかしその後に合流した友人・トシコ(杏)に対して、チエは当たり前のように他のキープくんたちの存在理由を話します。

トシコ(杏) 「じゃあ、その野村くん一人に絞ったら?」
チエ(吉高) 「いやぁそれはナシでしょ。相手が一人だったらさ、その人としかご飯行ったり旅行行ったりできないわけじゃん?もしもその人とスケジュールが合わなかったらオワリだよ?」
トシコ 「一人で食べればいいじゃん」
チエ 「いい?トシコ?人生って時間をいかに有効に使うかなんだよ。時間って限られてるでしょ?色んな人と色んな体験をした方が絶対にお得だよ」

『婚前特急』本編から引用

私はいつでもキープくんたちを選別できる立場にあるという自信がみなぎってます。こういう吉高さんは実にいいですねぇ。

仕事もバリバリにできるチエは、彼氏くんたちのメリット、デメリットを把握しています。「査定」という言葉を使い、彼女の手帳に記された5人の男たちの、評価を見ていきましょう。

彼氏1号(青木崇高)

一人目の男は、出口道雄(青木崇高)、29歳。合鍵ナンバーは1。

レストアのバイクショップ経営。自身ももちろんバイク乗りです。親父は不動産家さんの社長。家が安泰なだけに道楽で仕事をしています。

道雄のメリット

  • 時間が自由に作れる

道雄のデメリット

  • 凝り性だが飽き性でもあり、色んなことに付き合わされる

家柄が安定しており、性格もどこかのんびりとした道楽息子の道雄。チエが乗っているスクーターは、道雄からのプレゼントです!
デメリットは彼の強すぎるこだわりに付き合わされることくらいですが、その「くらい」は結婚を考えると結構厄介でもありますよね。

切られた彼氏

合鍵ナンバー2番は井上晋太郎という男らしいのですが、すでに切られたようで彼の名前は線で消されています。

彼氏2号(榎木孝明)

合鍵ナンバー3番は、美容室3店舗のオーナーである三宅正良(榎木孝明)、54歳。妻帯者。
お金持ちで、色んなものを買ってくれる彼は、嫌な言い方をすると「パパ」であり、太いパイプですね。チエの仕事のお得意様でもあります。

三宅のメリット

  • 研修と称して、色々なところに旅行に連れて行ってくれる

三宅のデメリット

  • 妻を言い訳に最近よく約束を破る

不倫なわけですからリスクは一番高い三宅との関係。しかし一番チエに対して貢いでいるのは彼であり、もらったプレゼントリストにはクロエのバッグロイヤルオーダーのピアス、MIU MIUの…(内容不明)といった品々が並びます。後に別の男に会いに行こうとするチエはワードローブを見て「これ三宅のか」と、彼に買ってもらった服であろうことを推察させます。
チエもチエで単なるお財布としては思っておらず、彼と会うときにもらったピアスをつけていったりしてましたね。

彼氏3号(浜野謙太)

合鍵ナンバー4番は、パン工場工員の田無タクミ(浜野謙太)、26歳。住んでるアパートに風呂がなく、いつもチエの家に借りに来ます。いつもニコニコしてますね。

田無のデメリット

  • 小太り。盗癖あり。図々しくいい加減。家が風呂なし。時々意味なく鼻血を出す。喋っていることに一つもうなずけない。散歩以外のデートに誘ってこない。人の話を聞かない。将来性がない。つまらないギャグを連発するが、それが結構受けていると思い込んでいる、人気者ぶるが、友達はいない。

田無のメリット

別に田無とは幼馴染や古い友人というわけでもなく、出会ったのはチエが就職してからです(おそらく新卒の時でしょう)。
彼だけはメリットではなくデメリット側から先に手帳に書き込まれていました。まあよくもこれだけ悪口をかけるものだと思いますが、それだけ彼のパーソナリティについては熟知しています。

田無にもらったプレゼントは星座の早見表。

彼氏4号(加瀬亮)

合鍵ナンバー5番は、食品会社の営業部長西尾みのる(加瀬亮)、33歳。別れた前妻との間に子供がいます。
同じ社会人として対等に、そして時に勉強になるようなことを聞ける存在。食卓で一緒にお酒を飲むシーンが目立ちます。多分食事や酒の好みも似てるんでしょうね。

西尾のメリット

  • 同じ営業職
  • 話していて、なるほどと思わされる
  • 割と何でも話せる

西尾のデメリット

  • 酔うとめんどくさい
  • 前妻との間に子どもあり

西尾にもらったプレゼントは営業用のバッグ、スーツなど。ちなみに西尾はチエが他に男がいることをもともと知らされています。その上で付き合っています。

彼氏5号(吉村卓也)

合鍵ナンバー6番は、イケメン大学生の野村健二(吉村卓也)、19歳。大学生なので当然資金力がありませんが、顔面偏差値が圧倒的に高い。免許とりたて。

野村くんのメリット

  • 若くて可愛い

野村くんのデメリット

  • 先々自分の歳が気になりそう

野村くんからはプレゼントをまだもらっていませんが、(期待できない)とチエは手帳に補足しています。笑
デートのディナー代もチエ持ちです。野村くんもバイトしたら奢らせて、とは言っていましたがね。

そんなこんなで5人のキープくんがいるチエですが、手帳のメリット・デメリット一覧ページは、
西尾(加瀬亮)→道雄(青木崇高)→三宅(榎木孝明)→野村(吉村卓也)→田無(浜野謙太)という順番で書かれています。

これはその時点でのチエの査定順と言っていいでしょう。

マシンガン吉高由里子が最高

チエは査定成績最下位の田無にまず別れを切り出すわけですが、ここで田無は拒否。「だって俺たち付き合ってないじゃん」と言い放ちます。

自分が「切り捨てる」はずだった相手にやり込められ、チエのプライドはいたく傷つきます。自分に自信があって、プライドが少しでも削られると傷つきやすい女性を演じるのが吉高由里子さんは本当にうまいですね。「はぁ?」っていう吉高さんマジ好き。
むかし月9であった『私が恋愛できない理由』にも似ています。

あんたはあくまでもこの私に切られる立場なんだ、それをわからせてやる!と田無への復讐に息巻くチエ。

結婚の決まった友人・トシコ(杏)に対してまくしたてますが、頭に血を上らせてまくしたてるチエの魅力と、全て見透かしたような態度で彼女の話を聞いてあげるトシコの構図は非常に見ていて面白かったですよね。「なんかチエの方が振られたみたいになってんね」と笑ったトシコのセリフよ。それなすぎる。

パン工場社長の娘・ミカちゃん(石橋杏奈)に想いを寄せる田無に対しても、チエは“あんたみたいなやつなんか”のマウンティングを節々に滲ませて攻撃しました。

「あんたは私から切られたの、私はあんたを切ったの!」

目に宿る敵意というんですかね、執念というんですかね、本当最高ですよ。吉高由里子さんのマシンガン論破は。

応戦するハマケン田無

ただしこの田無も、チエちゃんまあまあ落ち着いて、とか、そんな言い方しないでよチエちゃん、とかただなだめる側に甘んじているわけでもなく反攻を試みます。

「仮に百歩譲って、いや百歩じゃ足りないな、億歩譲って、ミカちゃんが誰とでも寝る女とだとしてもだよ?それが彼女の何を損なうんだよ」
「チエちゃんは友達いないからわかんないと思うけど」

ああ言っちゃいました。火に油を注ぐとはこのこと。そんなこと言ったら「はぁ?」になるに決まってんじゃん。
田無も田無でだいぶ精神年齢が低い!

田無が一番やべえなと思ったのは、ミカの家にチエと西尾を招き食卓を囲み、百人一首の話題に(チエを除いて)花を咲かせ、みんなで旅行行きたいね、京都(百人一首に出てくる小倉山)行ったら楽しそうって言ってるのに、「チエちゃんも来る?」って言ったシーン。

みんなで行くっていう話してるんですから、社交辞令的とはいえ「みんな」の中にチエは含まれて話してるわけですよ。ミカちゃんも大人だから。それを「お前今この話の外側だけど入りたい?」って言ってるようで、チエがあの場の他の3人から仲間外れになっていたことを表しているようだったんですよね。
チエが敵意に満ちた表情で田無の唇を奪った反応は、また別の怒りの発露だと思いますけど。

飲酒運転
ミカの家で普通に金麦をあおっていたチエがスクーターに乗って帰ったのは自然すぎてびっくりしましたが、ちゃんとオチもついていましたね。

それにしてもこの作品、全体を通して会話部分のテンポが非常に良いです。シチュエーションだけではなく、むしろ会話部分によって視聴者の共鳴を引き出しています。留置所のシーン含めて結構舞台っぽい感じの台詞のやり取りが多いとも思いましたし、ハイレベルの掛け合いが楽しめる『婚前特急』は超良質なラブコメだと思います。

ちなみに最後に田無のアパートにチエが入るシーン。以前は5本の合鍵が入っていたコインケースから、この時出てきたのは田無の部屋の一本だけでしたね。そういうことです。

ラストシーンはひたちなか海浜鉄道の阿字ヶ浦駅。電車は特急とは程遠いイメージの、名車キハ222。
せわしなく男性たちを査定したチエが、ついに見つけた本当に大切な人と歩む未来のレールが見えていくようで良かったです。

チエの結婚、トシコと彼女の夫は嬉しかっただろうなあ。好戦的なチエや田無の良さを引き出してくれた、マジで人間できてる夫婦でしたよね。
西尾もミカちゃんも道雄も野村くんも、一応三宅も。全ての恋する人に幸あれ!!

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