映画『海炭市叙景』感想|地方都市のリアル

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基本的に映画というものは、設定がある程度わかりやすくあってほしいというのが僕の思いだった。

人物の相関図が脳内でつながるからこそ視聴者は関連づけた人間ドラマを期待するし、また人間関係における緻密なプロットを楽しむことができる。

『サッドティー』とか『恋の渦』とかはそういう人間関係のアヤを上手く用いて作られた作品だった。とっても狭い人間関係のコミュニティを舞台に。

今回観た『海炭市叙景』は熊切和嘉監督がメガホンを取り、函館をモデルにした架空の都市・海炭市における市民の市井を描いたものである。

『海炭市叙景』のスタッフ、キャスト

監督:熊切和嘉
原作:佐藤泰志
脚本:宇治田隆史
井川帆波:谷村美月
井川颯太:竹原ピストル
目黒晴夫:加瀬亮
萩谷博:三浦誠己
工藤まこと:山中崇
比嘉春代:南果歩
比嘉隆三:小林薫

あらすじ紹介

90年に自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志の連作小説を、「鬼畜大宴会」の熊切和嘉監督が映画化。谷村美月、加瀬亮、小林薫ら演技派俳優陣が結集する。佐藤の故郷である函館をモデルにした“海炭市”が舞台。造船所からリストラされた貧しい兄妹、立ち退きを拒否する老婆、妻の裏切りに傷つくプラネタリウムで働く中年男、事業と家庭に問題を抱える若社長、息子に避けられ続ける路面電車の運転士など、地方都市の憂うつと再生を繊細なタッチで描きだす。

出典:映画.com

佐藤泰志の原作を映画化したオムニバスストーリーで、海炭市内の市井を細かく章分けして描かれたものである。



他人と繋がりなんてないのが普通

予備知識を全く持たず観たのも手伝って、登場人物の関係をつかむのにひどく苦労した。

加瀬亮が出ると聞いていたので第一章の谷村美月と一緒にいる男(兄=竹原ピストル)が加瀬亮だと思い込み、別章で加瀬が出てきてからありゃ?となる体たらくであった。

何じゃ、関係ないんかいって感じで。

しかし、である。

市井を描くという手前、何十万といる地方都市から抽出した人間がともに関わりを持っていることなんてありえない。

人口二百人とかの集落ならまだしも。

登場人物が必然的に絡み合っていく作品に見慣れていた僕にとっては、当然のことであるのだけれど、街を描くとはこういうことなんだなと再認識させられた。

何より凄かったのが加瀬亮の奥さんを演じた方と息子を演じた方、それに開発中の街中で立ち退きに応じないおばあさんを演じた方が素人という事実。これはびっくりした。

三人とも凄い演技力だった。

ストーリー的に起伏はないんだけど、それが逆に地方都市の鬱屈を表しているというか。

曇り空が多かったのも印象に残っている。

素人さんの頑張り、映画化にこぎつけた函館の皆さんのガッツに感服です。

佐藤泰志の「函館3部作」第2章である『そこのみにて光輝く』の感想はこちら