映画『転校生〜さよならあなた』〜蓮佛美沙子の男言葉を愛でよう〜

1982年公開『転校生』のリメーク版となる『転校生〜さよならあなた』を鑑賞。

2007年、蓮佛美沙子の初主演作品。
大林宣彦監督。原作は山中恒。

君の名は。にも通じる入れ替わり

82年公開の『転校生』は、男女が入れ替わるあべこべ手法のパイオニア作品。

現在ではジャンルを問わず一般化された技法だが、最近では『君の名は。』が記憶に新しい。

小林聡美、尾美としのり版のオリジナルを楽しんだ身としては本作に期待感を持って鑑賞したが、予想以上に面白かった。

時代錯誤感は否めない。だがしかし

オリジナルから25年が経ちながらも、男と女の区別を意味する言葉遣いは前時代的なまま。

今の時代では使わないであろう「〜だわ」「そうよ」「〜なのよ」というセリフを乱発しており、レビューを見るとその古臭さに辟易したという声もあった。

そう。時代錯誤。

時代錯誤ではあるのだけど、そのわざとらしさが僕は面白かった。

冒頭の一夫(森田直幸)と母(清水美砂)の会話から既に怪しく、作中のほとんどの言葉が台詞調。

会話の間合いも言わせてる感が満載で、自然会話を得意とする大根監督の作品などとは正反対である。

▲脚を広げる蓮佛美沙子。妖艶さがあまりないところがまた良い。 (C) 2007「転校生」製作委員会

また一美は家で着物を着て白い下着をつけており、自宅は黒電話。

いまどきそんな家ありますか?

これは大林宣彦監督がオリジナルを踏襲して狙ってやっているか、あるいはこういう形でしか撮れないかどちらか。

でも結果的にはファンタジー要素を浮き立たせる上で、この作り物感はとっても重要だと思った。

男と女を明示するという手段ではなく、映画全体をフィクションとして仕上げる効果。

現実的な描写が際立った『君の名は。』とは決定的に趣を異にしていて、ゆえに観る人は多分『転校生』に感情移入ができないんじゃないかな。

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猛々しい連佛美沙子

初主演となった蓮佛美沙子は一美役として熱演。

中身が一夫になってからの勢いと「オレ」の言い方、仕草は実に男らしい。

度々比較してすみませんが『君の名は。』を観た人は瀧と三葉の間で交わした禁止事項の約束を思い浮かべてもらえればいいかと。

また、一美が女の子として普段家でどのようにしているかの描写がなかった。

だからこそ視聴者は一美(中身は一夫)のガサツな態度とそれに対する家族の反応を見て、一美の本来の日常に想いを巡らせることができると思う。

妄想癖についてのフォローが少し足りなかったのはもったいなかったけれど。

82年のオリジナルには当然なかった携帯電話も登場し、一美(中身は一夫)が一夫(中身は一美)の言葉をメールにするシーンがある。
メールの文面を音読して打たせるのは本当に笑えた。

あれを大林監督自ら考案したのであればなかなかのセンスだと思う。

他にも一美に想いを寄せるキザなクラスメートや教育長のおじさん、その息子など、いかにも作られた感じのキャラクターが出てくるがみんな面白い。

敵役が存在せず、みんなが実はいい奴という構成の仕方は個人的に大好きである。

さよならあなたの意味付け

ファンタジー要素満載で進んでいたため、最後の最後まで僕は「さよならあなた」のさよならの意味を信じていなかった。

さよならをした後も何だかぽかーんと置いてきぼりを食らったような感じが続いた。

でもその置いてきぼりは、不快でも手のひらで転がされたわけでもなく、『転校生』という作品にのめり込んだ、その結果だと思う。
そしてその深入りを後押ししてくれたのは間違いなく蓮佛美沙子の演技だった。

彼女がもっと妖艶だったら(当時15歳)この作品にはエロという付加情報がついていたのだろうけれど、作内の蓮佛美沙子には色気がまだない。

加えて中に入っているのは中学生のガキ男子。
このあたりの潔い青さが、あべこべ手法を純粋に楽しむことに繋がったと思う。

鑑賞の際は完全なフィクションとして観ることをおすすめします。
僕はとても楽しめた。

★★★★★。

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