映画『0.5ミリ』〜安藤サクラ圧倒的有能〜

あけましておめでとうございます。

2018年もよろしくお願い致します。

2017年最後に見たのは安藤サクラ主演の『0.5ミリ』。ロケは高知で行われ、高知県での先行上映を経て2014年全国公開されました。

原作、脚本、監督は安藤サクラの実姉の安藤桃子。エグゼクティブプロデューサーを実父の奥田瑛二、実母の安藤和津が作中のフードスタイリストを務めました。

家もお金も失って

介護ヘルパーとして働くサワ(安藤サクラ)はある日突然、勤務先の片岡家の雪子(木内みどり)から「お父さん(織本順吉)と一晩だけ添い寝してもらえない?」と頼まれます。

この「お父さん」は介護が必要な寝たきり老人で、普段から昼間にサワがヘルパーとして接しているのですが、老人は母親(雪子の祖母)を忘れることができないということから、その母の幻想を夜のサワに重ね合わせたいということでした。

宿泊勤務が派遣元にバレたらクビになってしまうとサワは渋りますが、雪子の懇願に負けて片岡家に泊まることになります。

しかしサワが泊まった夜、大事件が起こりサワは解雇。ヘルパーの寮からも出て行かざるをえなくなります。現金の入ったコートも電車に忘れてしまい無一文の形で夜の街に放り出されてしまいました。

 

 

▲介護ヘルパーとしてテキパキと仕事をこなすサワ (C)2013 ZERO PICTURES / REALPRODUCTS

 
職もお金も住む場所も失った彼女の目の前に現れたのはお金を持っていそうな、それでいて利用方法がわからずにカラオケのフロントで揉める老人(井上竜夫)。
サワは関係者を装い、老人とフリータイムでカラオケに入室し、一夜を明かします。

そこからサワは過ちを犯した老人たちに交換条件を持ちかけ、家事をこなす代わりに家で匿ってもらう生活を始めました。

▲老人(井上・中央)の関係者を装いカラオケに転がり込むサワ。左は店員役の東出昌大。 (C)2013 ZERO PICTURES / REALPRODUCTS

 

この作品は196分ととても長い尺の映画でした。描きたいことやテーマ、撮りたかったであろうシーンが詰め込まれすぎていて、僕はそれらを全部受け止めて消化できるレベルには正直至りませんでした。

感想は断片的に良かった部分を探っていくことになりますがご了承ください。

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生活に溶け込み、溶け込ませ

サワは、介護士・ヘルパーとして高い能力の持ち主です。
彼女は限られた予算で食材を買ってごはんを作り、掃除も介護も高い水準でこなしていきます。

結果として、真壁先生(津川雅彦)の家で家事をするパートでは元々家で雇われていたお手伝いの浜田さん(角替和枝)からは後半疎まれてしまいますが、それもまたサワの「できる」部分を証明したエピソードでした。

 

 

▲サワが真壁先生につくった晩ごはん。この作品では食事がとても大事に描かれています。 (C)2013 ZERO PICTURES / REALPRODUCTS

 

ストイックにボクサーを演じた『百円の恋』も相当凄かったんですが、本作の安藤サクラもまた凄い。

特に料理のシーンでは仕込みから妥協せず丁寧に作り上げていく様子が描かれており、茂(坂田利夫)や真壁の胃袋を文字通りつかんでいきます。

作中でしばしば出てくる「若くて可愛い」というフレーズが安藤サクラに合致するかはまた別なんですが、詐欺ギリギリのところを家事能力ときっぷの良さで生き抜いていく安藤サクラのサワは実に魅力的。

老人たちの弱みに付け込むこともなく、また一方で居候する自分を卑下することもなく。毎日を生きるためにできることをこなし、その作業に自然に老人たちを溶け込ませることで彼らに生活の実感を思い出させていきました。

 

 

▲茂(坂田利夫)とのパートでは時に「妻」として振る舞うサワ。 (C)2013 ZERO PICTURES / REALPRODUCTS

 

 

 

僕が一番好きなのは真壁先生とのパートで、サワが漬けたみりん干しに真壁が興味を示し、干している時に「監視役」を務めるシーン。

堅物オブ堅物の先生が「猫に食べられたら困りますから」と大真面目な顔でみりん干しの前に座り待つ姿は実にほっこりします。

これは真壁家に仕えるお手伝いの浜田さんでは決してありえなかったこと。その人が食べるものを最大限気を遣い、共同作業を働きかけるサワだからこそ、真壁先生は興味を持ち、研究ノートに書き留めたのでしょう。
あの歳になってもまだ新たなものを学ぼうとする意欲、真面目さ。僕は真壁先生が大好きです。

先生がサワに心を揺り動かされていくのを見るのはとても楽しい。

 

 

▲真壁とサワの出会いはとあるショッピングモール。サワの囁きは恫喝ギリギリです。 (C)2013 ZERO PICTURES / REALPRODUCTS

 

 

『博士の愛した数式』を想起

真壁先生とのパートは先生の妻の介護、頑固な先生がサワを信頼していく過程、そして別れが段階的に描かれているのでわかりやすいと思います。

この作品は大きく分けて片岡家、茂家、真壁家と三つのパートに分かれていますが僕は真壁先生とのエピソードが好きでした。

小川洋子さん原作の『博士の愛した数式』にも近い設定です。

決して同情や哀れみではなく、世代の異なる孤独な人に働きかけながらお互いの人となりをわかり合っていく作業は良いものですよね。

終盤には安藤サクラ自身の義父である柄本明も登場します。製作陣の名前を見る限り安藤家総プロデュースのごった煮な映画でしたが、安藤サクラ個人で見ればやっぱり揺るぎない軸を持っている役者だなと再確認できました。

正直言って3時間は長すぎる上に、美しい無駄を贅沢に尽くした映画だと思います。映画単体では★★★☆☆ですが、やはりそこは安藤サクラというところで一つ加点。

寝たきり老人を介護する際の元気な声かけは抜群です。実際にヘルパーさんを見て勉強したんだろうなぁ。

ポスターのフレーズにもある「死ぬまで生きよう、どうせだもん」はサワのスタンスを表した素晴らしい言葉。そしてそのフレーズを体現した安藤サクラにまた拍手を送りたくなりました。

重ね重ねになりますが、本年もよろしくお願い致します。

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