映画『となり町戦争』感想〜原作の痛み、スリルはどこへ〜

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『となり町戦争』。主演は江口洋介、助演に原田知世。原作は三崎亜記の同名小説。渡辺謙作監督。

『となり町戦争』のスタッフ、キャスト

監督・脚本:渡辺謙作
原作:三崎亜記
北原:江口洋介
香西:原田知世
智希:瑛太
町長:菅田俊
田尻:岩松了

あらすじ紹介

ある日突然始まったとなり町との戦争。旅行会社に勤める北原は町の広報誌でその事実を知るが、周囲に変わった様子はなくいつも通りの生活を続けていた。そんな彼の元に、町役場“戦争推進室”の女性・香西から辞令交付の知らせが届く。偵察業務に就くことになった北原は、現実感のないまま偵察を開始するが……。

出典:映画.com

映画のネタバレ感想

以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

小説は賛否両論あるものの、僕は好きだった。読んだのはもう2年前だろうか。斬新なテーマでありながら破綻なく組み立てられたストーリー。緻密で丁寧すぎるほどに描かれる背景。そしてスリルとやるせなさ、哀しみを感じる構成。

だから、映画も楽しみにしていた。

だけど。

鑑賞後にはひたすら違和感が残った。江口洋介も、特に原田知世は、かなり原作のキャラクターを秀逸に再現していた。この二人に関しては良かった。この映画を単作として見れば成立しているんだろう。だけども。

違う。違うだろ。こんなんじゃなかったはずだ。
原作を読んだのは2年前。違和感に苛まれ、本棚から小説を引っ張り出して斜め読みした。
そして、唖然とした。

この映画は原作をねじ曲げている。正確に言えば、原作のおいしいところを全てカットして、その分で原作にないストーリーを捻出している。

小説を読んで読者が感じる痛み、スリルの部分が全く存在しない。本当に、全く存在しない。

そのくせ、ストーリーの本筋と異なるシーンだらけ。ラストも変更されていて、原作へ対するリスペクトが何も感じられない。ふざけてる。

監督は何を表現したかったのか。また、原作を読んでどこを肝だと感じて映画にしたのか、理解に苦しむ。

繰り返すようだけど江口&原田コンビは頑張っていた。

でも、この映画からは何も生まれない。映画だけを観て、がっかりした人は原作を読んでみてください。好き嫌いは別にして映画とは比べものにならないインパクトを保証します。