2月28日に封切られた『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』を鑑賞しました。
石川県能登半島の珠洲市で撮られた一本。
出演は永作博美、佐々木希。監督は台湾のチアン・ショウチョン。
『腑抜けども〜』を想起させ
能登半島の先端(最果て)に位置する珠洲を舞台にした映画だが、田舎町を描くよりも、海の音、また金沢という都会と地理的に離れているという環境面で珠洲に意味を持たせている作品である。
永作博美出演、さらに永瀬正敏が眼帯姿で出演。
これは石川県輪島市を中心に撮られた『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』のミラーのように感じられた。この作品では永作と永瀬が夫婦を演じており、永作が眼帯をつけているシーンがある。
もちろんストーリーに関係はないでしょうが、石川の海の町、また山奥の町に生きる永作博美(と永瀬正敏)。本作を見て気になった人は『腑抜けども~』を観てみると面白いかもしれない。
設定は序盤で理解できるものだが、あえてここでは触れないでおく。タイトルに入っている「香り」とは珈琲の焙煎ということで良いだろう。
珈琲店を営む永作博美は、彼女がエプロンをつけて髪の毛を後ろでまとめ、ばしっとおでこを出しているだけで何か珈琲の香りがスクリーンから漂ってきそうな雰囲気を醸し出していた。
永作博美と桜田ひよりに支えられ
この映画は環境から演出までがとても柔らかく、書籍で言えば角田光代さんの作品によく似ているイメージ。
角田さんの実写化された作品に出演した永作博美だからこそ、そう見えるのかもしれないけれど。
佐々木希、臼田あさ美が綺麗なんだけれど、演技面では明らかに浮いているため、永作にかかる負担はあまりにも大きい。
多少突っ込みたくなる設定もあるにはあるのだが、佐々木希で安っぽくなりがちなところを永作がカバーしていた。
永作博美じゃなかったら長回しや車の運転といったシーンは冗長に耐えきれなかったはず。僕はこの作品が好きだったが、キャラクターで言えば7割は永作博美によって支えられていたと言っても過言ではない。
好きな女優なので佐々木希を非難するわけではないけれど、読み方、歩き方から既に気持ちがこもっておらず、製作側も綺麗な佐々木希というビジュアルにとらわれ過ぎていた気がする。
だとすれば、もっとネグレクトは長い期間で描かないと駄目。
佐々木希の娘役を演じたのは『明日、ママがいない』でピア美を演じた桜田ひよりだが、贔屓目を差し引いても抜群に良かった。
うつむき加減、ランドセルの背負い方、ごめんなさいの言い方。小学三年生の設定には無理があるほどの周りをよく見ている少女だった。
永作博美と桜田ひよりに相当助けられた作品ではあるけれど、好きな部類の一本だった。