映画『女子高生に殺されたい』ネタバレ感想|美男教師×田中圭の破壊力

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こんにちは。織田です。

今回は2022年に公開された映画『女子高生に殺されたい』をご紹介します。

主演は田中圭さん。監督・脚本は城定秀夫監督。原作は古屋兎丸さんのコミックスです。

「女子高生に殺されたい」という願望に取り憑かれた高校教師(田中圭)が、その願望を成就させるために仕掛けた壮大な計画。
「女子高生」たちを巻き込みながら、物語はスリリングに進んでいきます。

苺を持つ女子生徒と首に手をやる高校教師。穏やかじゃないですね…。

原作は数年前に読んでいたんですが、映画版では城定監督のアレンジがとても効いていました!

本記事では以下の部分に言及しながら感想を書いていきたいと思います。

  • イケメン教師と田中圭
  • 原作からの足し算、引き算

感想部分では作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



あらすじ紹介

女子高生に殺されたいという願いをかなえるため、高校教師になった男・東山春人(田中圭)。赴任先の学校で人気教師として日々過ごす一方で、これまで9年間をかけて理想的な殺され方のための完璧な計画を練り上げてきた。理想とする「完全犯罪であること」「全力で殺されること」を目標に、平穏な学園内で彼の自分殺害計画は進行していく。

出典:シネマトゥデイ

スタッフ、キャスト

監督・脚本 城定秀夫
原作 古屋兎丸
東山春人 田中圭
佐々木真帆 南沙良
小杉あおい 河合優実
川原雪生 細田佳央太
君島京子 莉子
沢木愛佳 茅島みずき
深川五月 大島優子

舞台となるのは二鷹高校・2年C組。
二鷹高校というのは東京の都立三鷹高校(現・都立三鷹中等教育学校)を模したものだと思います。進学校です。

サッカー部が強く、全国大会に出てきますね!

主演の南沙良さんは『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(2018)での好演が印象的。河合優実さんは今年(2022)公開された城定秀夫監督の作品『愛なのに』でも高校生役を演じており、いま最も旬な女子高生役を演じている俳優のひとりです。

『君が落とした青空』(2022)の莉子さん、『青くて痛くて脆い』(2020)の茅島みずきさんも含め、登場人物のキャラがよく立っていました!

 

『女子高生に殺されたい』のあらすじや評判、口コミはMIHOシネマさんの記事でも読むことができます。(ネタバレなし)
ぜひご覧ください!

 

この後、本記事はネタバレ部分に入ります。映画をまだご覧になっていない方はご注意ください。



田中圭がガチでハマり役!

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

 

『女子高生に殺されたい』をご覧になった皆さんは、主人公の東山春人先生(田中圭)にどのような印象を抱いたでしょうか?

やばい、サイコ、変態、異常……さまざまな形容詞が浮かびますよね。

映画公式サイトでの城定秀夫監督のコメントを引用すると

「しかも主演は田中圭さんです。田中さんが女子高生に殺されたくて殺されたくてたまらないマッドティーチャー東山春人を生き生きと演じているわけですから」

と紹介されています。
マッドティーチャー。確かにですね。笑

死にたい、のではなくて、殺されたい。
しかも手をかけられる対象は女子高生でなければならない。

それが東山春人を駆り立てる原動力でした。

田中圭の醸し出す美男要素

体育館の写真

(出典:写真AC)

そういうわけで、田中圭さんが演じる東山春人という教師は常軌を逸した嗜好を有しています。

「女子生徒を性的な目で見たことがない」と自身は性的な関心がないことを明かしてはいるものの、彼の「殺されたい」という欲望に基づいた計画のターゲットは、女子高生に限定されています。彼の真意がどうであろうが、キモい無理と認定された時点でアウトなわけです。

ロリコンだ変態だという単語も出てきますし、単純に彼の動機自体をやばいと思った方もいるでしょう。

ここでポイントとなってくるのが、東山先生は女子生徒から黄色い声が上がり、「ヒガシ」と愛称で呼ばれ、ファンも多く、いつも女子生徒に取り囲まれているかっこいい教師ということです。

(まあ中にはなびかない子もいて、それに対する五月(大島優子)の「アンチもいるんだ?」はあまりにも秀逸でした。笑)

この「かっこいい東山先生」に田中圭さんの起用は最適でした。

柔らかさのある優男要素、美男要素といったアイドル的な偏差値の高さを持つ一方で、(映画内では1987年生まれと設定された)30代中盤の人間的な余裕、深みも表現できる。それが田中圭という人だと思います。実際の田中さんは1984年生まれですが、30代そこそこと言われても違和感がありません。

20代中盤くらいの幼さを残した教師では、生徒から見て「お兄ちゃん」になってしまいますし、逆に大人の渋さがありすぎると、その教師は万人にキャーキャー言われる枠からは外れます。「かっこいい」にはいくつかの種類がある中で、中高生にとって“恋愛対象”となることのできる教師は実は多くありません。

東山先生の赴任してきた始業式で女子生徒の8割9割はどよめき、ざわめいたわけですけど、あれだけ多くの歓声を獲得できるのは田中圭であってこそだなと思います。

私が男子生徒だったら嫉妬しますけどね。笑

田中圭さんは年齢を重ねてもなお“若く見える”俳優ですよね。『そして、バトンは渡された』『哀愁しんでれら』のように父親役を演じたとしても、美男として見られる恋愛対象現役感があります。

イケメン教師の裏の顔

女子高生にハートマーク付きの好意で囲まれる東山先生。
その裏で、彼は女子高生に殺されたい自分の願望、人生の目標を成し遂げるため物語を少しずつ動かしていきました。

ヒガシ親衛隊の一人ともいうべく、好意を隠そうとしない君島京子(莉子)には彼女の好意を利用する形で近づき、仏頂面を隠さない柔道部の沢木愛佳(茅島みずき)に対しては、彼女に着せられた嫌疑を晴らすことで心の距離をしたたかに縮めて見せます。

二人きりになると下の名前で呼ぶなど、生徒に「自分だけが特別」と思わせる部分でも抜かりがないですね…。

愛佳が疑われた大型犬の一件については、この記事の後半部分で感想を書いていきます。

生徒から絶大な人気と信頼を得ているイケメン教師が、実はやばいやつでしたというのは『悪の教典』(2012)を思い出します。

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『悪の教典』では伊藤英明演じる高校教師・蓮見が主人公。明るくて優しくてかっこいい蓮見は「ハスミン」として生徒たちから愛されていました。しかしその裏の顔は、目的達成のためには手段を選ばない人間でした。
彼は結果的に生徒たちを残酷に裏切っていきます。

dTVで配信(2022年4月時点)されている全4話の『悪の教典 序章』ではハスミンがいかに生徒や同僚からの信頼を得たかが描かれているので興味のある方はご覧ください。

当時『悪の教典』のハスミンも衝撃的だったんですが、『女子高生に殺されたい』の東山先生は「女子生徒の人気獲得」という面、また実は裏の顔を持っているという面においても、さらに良かったと思います。

『哀愁しんでれら』でモラルが結構おかしい父親役を演じていたこともあり、田中圭さんには“ただのいい人”の向こう側を醸し出す印象があったのも大きいかもしれません。

生徒に人気絶大の、その一方でマッドティーチャーである主人公を田中圭さんが演じたことが、この映画の最大のポイントだったと思います。前者も後者も違和感がなく納得して東山先生を受け入れることができました。



原作からの足し引き

続いて原作コミックを既読の立場から、映画でアレンジされた部分について観ていきます。

コミックは全2巻。2022年4月時点ではアプリ内で無料で読むこともできましたので是非どうぞ。私は「マンガBANG!」で読み直しました。

京子と愛佳と「彼女」

原作を読んだ方からすると、映画版で一番驚いたのは君島京子(莉子)沢木愛佳(茅島みずき)というオリジナルキャラクターの追加ではなかったでしょうか。

原作では東山先生に加え、真帆、あおい、雪生、五月先生の5人で物語は回っていきます。真帆はクラスきっての美少女で、東山が彼女に執着する様子も早々にわかります。

一方の映画では、東山にベタベタとついて回る京子(莉子)が描かれ、しかもメインキャラクターに躍り出てきます。
対照的にクールな様子を保っていた愛佳(茅島みずき)も、京子とは対照的な位置で登場してきます。

美少女・佐々木真帆(南沙良)はむしろそれほど目立たず、保健室登校の小杉あおい(河合優実)と常に二人でいる存在でしたね。

京子と愛佳の追加によって物語にプラスされたのは、二鷹高校にやってきた東山が探し求めている「彼女」が誰なのかを観ている側が探っていくミステリー要素です。

「女子高生に殺されたい」。
その願望の対象となる「女子高生」は誰でもいいのかというと違って、東山は“必死で抵抗する自分を力で凌駕し、首を絞めることができる女子生徒”という条件をつけています。どう殺されるのかについてもこだわりを持っています。

必死で抵抗するということはイコール東山がもがき苦しむ時間であり、その抵抗・苦痛も彼が計画に求めている部分です。崖から突き落とされて死ぬなんてもってのほかだと言っていましたね。

その“強い力”を有するのは、序盤では明らかになりません。
柔道部の愛佳はもちろん、ヒガシ親衛隊の京子にもそんな側面があるのではないか、東山の求める「彼女」なのではないかと邪推させる形で、「彼女」とは誰なのかを探る展開となっていきました。



キラキラ青春としての側面

また映画では、東山が自分の計画実行日に設定した日についても原作から改変がなされています。

原作では2年生の夏休み、お盆前の8月に設定されていた一方、映画版では11月8日の文化祭を決行日時に据えています。

これは文化祭で2年C組が(東山の指図により)演劇の出し物をして、京子や愛佳を自らの願望成就の引き立て役として登場させる部分でも意味があるんですが、ここに『女子高生に殺されたい』が青春映画としての表情を持つ側面が含まれていると思うんですよね。

高校生活が人生で印象深い時期だったと思える方は多いと思います。

その内訳は所属していた部活だったり、受験勉強だったり、あるいは友達と過ごした毎日だったりするわけですけど、文化祭や体育祭、合唱祭のような学校行事を一番に挙げる人も多いのではないでしょうか?

映画に限らず高校生の青春を描いた作品においては、特に文化祭の描写がされることがとても多いですよね?

これは文化祭を高校生活の大事な思い出として位置付けている(元高校生の)作り手側の意向もありますし、そのような作品を見て「高校の文化祭は全力燃焼したい!」と楽しみにして入学してくる未来の高校生もたくさんいます。

私が卒業した高校の文化祭はそこまで規模の大きいものではなかったものの、それでもみんな夏からの数ヶ月間を文化祭に向けて必死に費やしていましたし、居残りで設営に励んだり、ダンスや演劇のような出し物の練習を放課後集まって行なったりしたことは大切な思い出になりました。
このように比重を置くのが文化祭ではなくて、体育祭の学校もあったでしょう。

だから文化祭を重要な一日に据えた『女子高生に殺されたい』は、高校生にとっての憧れのイベントを捨てることなく描いた青春作品だと思うんですよね。

しかしそんな一大イベントの本番で、多数のギャラリーがいる前で、東山先生は首吊り未遂を行なってしまいました。
彼はもちろんひっそりと舞台の裏側でやるつもりだったので本意ではなかったと思いますが、あの光景を目にしてしまった生徒たちの傷は想像に難くありません。あんなん見たらトラウマになりますよね…。

入院する東山先生へのお見舞いは最初だけでした。あれだけ「ヒガシィ〜」と懇意にしていた京子も、陽キャ男子のチャリの後ろに乗って楽しそうに下校するなど脱・ヒガシが進んでいます。
まあそりゃそうなるよねって話ですよね。笑

犬のシーンと東山の9年間

犬の画像

(出典:Pixabay)

最後に大型犬の一件についてです。

あれは「キャサリン」が現在も力を持っているのかどうかを東山(田中圭)が試した残忍なシーンでした。

映画では東山赴任後の出来事として描かれていましたが、原作では6年前、すなわち真帆とあおいが小学生の時期に行われた出来事でした。

これを過去ではなく、高校生活上のラインに置いたことで得られる効果、また失った部分があったと思うんですね。

まず得られた部分としては、柔道部の愛佳(茅島みずき)を「彼女」(キャサリン)候補に追加し、彼女を東山の「殺されたい」物語の中に組み込めたことです。

腕っぷしの強い愛佳はこの一件により周囲から疑われ、——そもそも東山にとっても犬の屍が教室で晒されるなんてことは想定外だったと思うのですが——、東山はこの予想外の展開によって愛佳との距離を近づけることができました。

もう一つ映画版描写の利点を挙げると、東山が真帆(南沙良)のハンカチを盗み、彼女の匂いを犬に嗅がせて訓練していたところでしょうか。

原作では小学生時代の真帆とあおいが東山(不審者)に公園の水道でハンカチを奪われていたことが、終盤になって後出しのような形で描かれています。

映画では真帆(キャサリン)が過去に経験した団地での事件も含め、基本的に事実の後出しをすることなく進んでいたため、ハンカチ盗みを流れの中で描いたのはスムーズでした。あの時点ではハンカチの持ち主、犬に襲われた「キャサリン」が誰なのかははっきりしませんでしたしね。

一方で犬の一件を高校生の現在時間軸に組み込んだことで失われた部分もあります。
「キャサリン」に執着する東山が温めていた、9年にも及ぶ計画期間の部分です。

原作において犬の一件は東山と真帆が、事件後の精神鑑定で出会い、二鷹高校で再会するまでの9年間、その間の部分に起きたものです。

つまり、どれだけ東山が長い間、キャサリンを見ていたのかという彼の執念、計画力を表したシーンです。

これが現在パートに組み込まれたことで、東山が練り上げてきた“9年間”にもわたる計画の異質性、気持ち悪さは薄れたのではないでしょうか。あおい(河合優実)は運動会で真帆を盗撮していたりして東山が真帆をつけ狙っていたことに気づいていましたが、それでも東山の準備してきた長い年月の粘着気質は少し失われたのではないかと思います。

ただ前述したようにハンカチ盗みや愛佳の組み込みという面ではスムーズだったので一概には言えませんね。

東山の嗜好でいうと、「なぜ女子高生でなければいけないのか」の部分は映画では強くありません。
これは端折ったというよりも、原作で描かれた東山の嗜好が結構アウトなものだったために自重したのではというのが個人的な見方です。

原作のコミックではそういった東山のヤバさに加え、雪生についても厚めに描写されているので映画鑑賞後にぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

アプリ「マンガBANG!」でも読めます(2022年4月時点)

最後になりますが、この映画は出演陣の皆さんが色濃くキャラクターを投影していて素晴らしかったです。

社会人経験を持つ人間としての深みと親しみやすい若さを持ち合わせ、生徒たちに“憧れ”を寄せられる田中圭さんの東山先生、大島優子さんの五月先生はとても自然でしたし、東山の真意に気づくあおいを演じた河合優実さんもさすがでした。

「私が真帆を守る」はやばかったです…!泣きました!

そして何より佐々木真帆を演じた南沙良さんですよね。

カオリ、キャサリンという別の人格を有することで時に起こる豹変ぶりはもちろん、真帆として過ごす普段の学校生活での彼女は圧倒的主人公でした。

孤高の美少女でもクラスの中心的存在でもない立ち位置。あおいを大切にする思いやり。自分に自信が持てず、恋をしていいのかと思い悩む日々。

南さんが見せる行動、表情ひとつひとつに、逡巡する高校2年生・佐々木真帆が表現されているようで最高でした。
あおいちゃんと雪生くんには、これからも真帆ちゃんのことを大切に見守っていってほしいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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