2012年の映画『ポテチ』を鑑賞。濱田岳主演、中村義洋監督。
原作は伊坂幸太郎。単行本『フィッシュストーリー』に所収されている。
あらすじ紹介
同じ年、同じ日、同じ街で生まれたプロ野球のスター選手・尾崎と、空き巣を生業とする凡人の今村が運命に翻ろうされながらも、家族や恋人を巻き込んで目に見えない強い絆によってつながれていく姿を描く。舞台は伊坂作品おなじみの仙台。
スタッフ、キャスト
監督・脚本 | 中村義洋 |
原作 | 伊坂幸太郎 |
今村忠司 | 濱田岳 |
尾崎選手 | 阿部亮平 |
大西若葉 | 木村佳乃 |
黒澤 | 大森南朋 |
ミユ | 松岡茉優 |
今村の母 | 石田えり |
中村親分 | 中村義洋 |
仙台のロケ地は健在
『アヒルと鴨のコインロッカー』、また『ゴールデンスランバー』を作った伊坂×中村タッグである。
原作が入っている『フィッシュストーリー』は短い物語を広げて尺の長い映画にしたという形であったが、本作は68分と短い時間にわりとしっかりとした中篇物語を濃縮したもの。
これまでの中村組同様、かなり原作に忠実に、またリスペクトを払った構成となっている。
今村(濱田)と若葉(木村文乃)のセリフは小説とほとんど変わらない。
勾当台公園のシーンから映画は始まり、同じく『ゴールデンスランバー』でも使用された藤崎、仙台駅前、『重力ピエロ』のMEALSとおなじみのロケ地が続く。
伊坂映画の常連さんはそのあたりを気にして見ても面白いかもしれない。
野球の試合がハイレベル
東日本大震災の後に作られた映画である。大森南朋が若者を諭す際に、もうあんな地震が起きぬように、と震災のことを例で示している。
ここは原作の小説にはない部分。中村監督らしい心配りだと思う。
また目に付いたのが野球の試合シーンのレベルの高さ。
尾崎選手を演じた阿部亮平は野球経験者なのである程度スイングなども立派だったが、それ以上に投手役の人は明らかに素人ではなかった。
自然に見える野球中継はとてつもなくレベルの高いものである。
エンドロールで見ると六大学の仙台出身者のようなことが書いてあったが、いずれにせよ普段見ている甲子園レベルの球を投げていて心底びっくりした。
『陽気なギャングが地球を回す』でもそうだったが、伊坂作品の悪党が悪役にならない心地よさは継続。
悪党ではないにせよ、濱田岳たちの仕事は真っ当ではないのだけど。