映画『世界は今日から君のもの』ネタバレ感想〜あんな母親だったら絶対グレる〜

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こんにちは。織田です。

2017年の映画『世界は今日から君のもの』をAmazon prime videoで鑑賞しました。

尾崎将也監督。引きこもりだった主人公を門脇麦が演じています。

ゲームイラストの模写で自分に「できること」を見つけ、その後イチから描き出す壁にぶつかり自分に「できないこと」を知り、世界の一員としてマイペースに歩んでいく。

心配性で過保護な父親と、自分のことを取り柄のない娘だと決めつける母親の元、主人公の真実は一歩ずつ自分の世界を見つけようとしていきます。

親とうまくいかなかった経験がある方や、親に自分の能力を認められなかった経験がある人にとっては、結構響く作品なのではないかなと思います。



『世界は今日から君のもの』のスタッフ、キャスト

監督・脚本:尾崎将也
小沼真実:門脇麦
矢部遼太郎:三浦貴大
安藤恵利香:比留川游
小沼英輔:マキタスポーツ
美佳:YOU
真実の幼馴染:岡本拓朗
マブチ:安井順平
恵利香の飲み友:駒木根隆介
トヤマ:西岡大
バイトリーダー:加藤パーチク
ヤスダ:比佐仁
カフェの店員:三浦萌

門脇麦と父親を演じたマキタスポーツは、『ここは退屈迎えに来て』でも共演。 直接2人が関わりあうシーンはなかったものの、本作とは全く違う門脇麦が見られる映画です。 興味のある方はご覧ください。

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映画『ここは退屈迎えに来て』ネタバレ感想~なっちゃんの”あの後”は?~

2020年3月24日

あらすじ紹介

漫画やイラストを模写して現実逃避してきた小沼真実(門脇麦)は、人と関わることが苦手だという理由でおよそ5年もの間、引きこもっていた。ある日、彼女は父(マキタスポーツ)の勧めでゲーム会社のバグ出しの仕事を始める。やがて、社員の矢部遼太郎(三浦貴大)が担当するゲームのイラストに手を加えたのをきっかけに絵の才能が認められ、ゲームキャラクターのイラストを依頼される。遼太郎に淡い恋心を抱く真実は、役に立とうと奮闘するが……。

出典:シネマトゥデイ

以下、感想部分で作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。



映画のネタバレ感想

それでは3つのパートに分けて映画の感想をご紹介していきます。
以下、作品のネタバレや展開に触れていきます。未見の方はご注意ください。

お父さんの過保護

主人公の真実(門脇麦)父親(マキタスポーツ)との二人暮らし。

両親は離婚しており、母親(YOU)はすでに家を出ていっています。

怪我をして工場のバイトを辞めてしまった真実を心配し、父親が見つけてきたのはゲーム会社のデバッガー(バグを見つける仕事)のアルバイト。

「真実、ゲーム好きだからいいかなって」

真実が再び引きこもりにならないか心配するのはわかりますが、成人済みの娘のバイトを見つけてくるお父さん…自分がと考えると少し気持ち悪いですね。

ただ、結果として真実はバイト先のゲーム会社で自分の「できること」を見つけて周りから評価されることになります。

おそらく彼女の人生で初めて他人から頼られ、評価された瞬間です。


真実の上司となった矢部(三浦貴大)から真実の才能と仕事ぶりを聞いたお父さんは驚きます。きっと真実のことをとても誇りに思ったことでしょう。

社会で人と関わることすらできないのではと心配していた娘が、立派に職場で周りから認められ、しかも自分にしかできない仕事をしているわけですから。

自分も現実はうだつの上がらないカフェの店長でありながらも、矢部と話しながらお父さんは饒舌です。

「ま、僕も職場じゃチーフってことで自由にやらせてもらってますけどネ」

真実の成功はお父さんにも自信を植えつけていったんですね。
屋台で気持ちよく酔いながら矢部に懇々と親父トークをするマキタスポーツは最高です。
部下であるカフェの店員(三浦萌)とのやりとりを通して、お父さんが店長として成長していくのも上手な描写です。

ただ、そんな彼を快く思わない人がいました。

お父さんにとっての元妻、真実にとってのお母さんです。

お母さんの支配欲

YOUが演じたお母さんは、自分が相手より上に立ち、自分が「してあげる」立場だと信じきっている存在として描かれていました。

真実が子供の頃に拾い集めて来た(彼女にとっての)宝物を捨て、「ガラクタ捨てといてあげたから」と言い放ったお母さん。

社会で居場所を見つけたはずの娘に向かって「あなたは慎ましく謙虚にいればいいの」と諭すお母さん。もはや洗脳。

娘が社会で人の役に立っていることを嬉しそうに話す元旦那に、

「なんであなたが自慢げに話すの?」
「まるで自分の手柄みたいに言うのね」

と口を尖らせるお母さん。

自分と近しい人間が、自分のいないところで上手く行っていることが面白くない、とやっかむ気持ちもわかります。
自分の血を受け継いだ娘の自慢を別れた旦那にされるのも面白くないのはわかります。

でもこれはもはや「面白くない」のレベルを超えています。

常に相手が自分の支配下にないと嫌な、というかマウントを取る・取られるが人生のすべてであるかのように振る舞うお母さんは、何だか虚しく映ります。
そしてそれは娘の立場からするとすごくプレッシャーのかかる存在だったはずです。

「私と一緒に暮らしましょう」と言われた真実が断ったのは、この映画で一番、彼女の成長を描き出したシーンではないでしょうか。
しかしあれだけストレスを感じるキャラクターをこちらに植え付けることができたのも、YOUという女優の魅力が大きいと思います。タイプが違いますが、問題ありの母親を演じた点では『誰も知らない』に通じるところがあるかもしれません。

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映画『誰も知らない』ネタバレ感想〜かわいそう、だけじゃないよね〜

2014年1月2日

真実はなぜ「ありがとう」を言ったのか?

『二重生活』『愛の渦』『さよならくちびる』など様々な作品に出演している門脇麦。
凛とした強さが光る役や、ミステリアスな役まで多岐なキャラクターを演じることができる女優です。

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そんな彼女が本作品で演じたのは、ボーッとしておとなしい真実という主人公。 矢部(三浦貴大)との会話でも「…あ、はい」を連発する、捉えどころのない不思議ちゃんです。
恵利香(比留川游)はそんな真実を見て、当初「見ててムカつく。ってか新っ鮮」と評していました。

思ったことをズバズバ言ったり、すぐ行動に移す恵利香にとって、真実が異質な存在に映るのも無理はありません。

ラストシーンでマブチのオフィスを訪れた矢部と恵利香に、真実はお礼を言いました。

お父さんにバイトを紹介してもらっても、バイト仲間のヤスダ(比佐仁)にお菓子をもらっても、彼女はせいぜい「どうも」と言うくらいだった彼女が、「ありがとう」と口にしました。

真実は優しい子だと思います。

玄関では脱いだ靴をきちんと揃え、波打ち際に揺れるクラゲをゆっくりと観察し、自分の書いた模写のイラストを段ボールに大切に保管しています。
けれど、人に対してちゃんと思いを伝えることはほとんどなかったはずです。

そんな真実が言った「ありがとう」。きっと恵利香もそれを聞いて嬉しかったはずです。
 

最後に余談ですが、駒木根隆介の演じる男が恵利香の家で真実を襲おうとしたシーン。
あれはやりすぎだったと思います。ってか犯罪です。

許されたことをいいことに、のうのうとその後も居座る男も気持ち悪かったし、何故あの構成にしたのかも疑問が残ります。

真実が人生経験に乏しいことを描きたかったのかもしれませんが、他にやり方があったんじゃないかなと感じました。
三浦萌が演じたカフェ店員や矢部の部下・トヤマ(西岡大)といった脇役がいい味を出していただけに、もったいなかったです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。